こんにちは、画家の落合真由美です。
油絵と言えば絵の具の重厚感や光沢感が特徴
ですね。油絵の具特有の光沢はほかの画材
にはない魅力ですね。
この光沢によって暗色は深みがあって重厚な
雰囲気になりますし、明色には輝きを
もたらします。
こういった光沢をしっかり演出することも
油絵の表現において重要なことです。
しかし、描いている途中で光沢が失われて
しまったり、乾燥すると光沢が引いて
しまったりすることがあります。
これは絵の具の種類によって光沢が少ない
ものがあるためです。光沢を気にして
リンシードオイルなどを多く使いすぎると
乾燥が遅れたり黄変の原因になったりする
ので注意が必要です。
そこで便利なのがワニスの存在です。
ワニスによって油絵の光沢を変化させること
ができるのです。
ワニスは必ずしも使わなくてはいけないもの
ではないので使ったことのない方も
いらっしゃると思いますが、
今回は「油絵の具の光沢を調整するワニス」
について解説していきます。
目次
ワニスの役割とは?

油絵の具は乾燥すると表面に油の膜ができる
ことで光を反射させて光沢ができます。
油絵の具の種類によっては光沢が少ない色が
あったり、制作過程によって光沢が
損なわれてしまうことがあります。
水分と揮発成分が逃げると絵の表面に
クレーターのようなものができてしまい、
それによって表面に当たる光が乱反射して
艶を鈍らせてしまうからです。
しかし、油絵の具の光沢はワニスによって
コントロールすることができます。
ワニスを塗ることによって、作品の表面が
平らになり光沢が出ます。
これは樹脂の鏡面効果によるものです。
ワニスの役割としては画面を保護し変色を
防いでくれます。
油絵の具は本来そのままでも完結するように
なっていますが色によって光沢にムラがある
ため完成後に気になることもあるでしょう。
顔料によっては時間の経過とともに黒ずんで
くるものもあります。
ワニスは画面の光沢を均一にしてくれるので
油絵らしい重厚感や高級感が増し、作品価値
を高めてくれます。
公募展への出品作に塗ったり、完成した作品
を長期保存するときに活躍してくれます。
完成後にすぐにワニスを塗るのはNG?

油絵の具は時間をかけてゆっくり乾燥する
画材です。
半年くらいは油絵の具の化学反応を
待たなくてはいけません。そのためワニスを
塗るタイミングも早すぎてはいけません。
乾燥期間中に表面をワニスで固めて絵の具の
化学反応を妨げてしまうと中の水分や
揮発成分の逃げ場がなくなり表面のワニスが
白く曇ってしまったり、乾燥が遅くなって
しまいます。
ワニスには用途や使用タイミングによって
さまざまな種類があります。
代表的なモノは「タブロー」と「ルツーセ」
です。
半年以内に艶を出したい場合はルツーセを
塗っておき、半年から一年以上十分乾燥
させてからタブローを塗りましょう。
気軽に使えるタブロースペシャルも便利です。
ワニスの種類については、このあと解説して
いきます。
ワニスの種類を分かりやすく解説

ワニスとは何か?
それはバニスとも呼ばれる絵画の表面に塗る
透明なニスのことです。
天然樹脂を使用した伝統的なワニスと
艶出しと画面保護のために合成樹脂で
作られたワニスがあります。
また艶消しと画面保護をしてくれるワニスも
あります。
乾燥後に塗るワニスはタブロー
作品が完全に乾燥してから塗るワニスは
「タブロー」や
「ピクチャーワニス」などと呼ばれています。
完成した作品の画面保護と艶出しのために
使います。
ダンマル樹脂や合成樹脂で作られていて
ガラスのようなキレイな光沢が出るのが
特徴です。
このニスは全く空気を通さないため半年から
一年以上の十分な乾燥期間を設けてから塗る
必要があります。
タブローはテレピンで少し薄めて流動性を
持たせても塗りやすくなるので筆さばきが
悪い時はテレピンで調整しましょう。
また湿度の高い環境では塗った部分が白く
曇ることがあるので雨天時や湿度の高い場所
での作業を避けて塗布しましょう。
タブローを除去したい時はテレピンで落とす
こともできます。
使用後はタブローの瓶のふたは固まって
開かなくなることがないように拭いておくと
良いでしょう。
制作中や未乾燥の作品にはルツーセ
一時的に艶を回復させるワニスを
「ルツーセ」と呼びます
制作途中に作品の光沢ムラを解消して均一に
したいときはルツーセを使います。
制作中に画面の光沢にムラが出てくると
光沢の違いが色の明度にも影響することが
あります。
光沢のない色は明るく見えやすく
光沢のある色は暗く見えやすいものです。
完成後にワニスを塗ると色の明度のバランス
が制作途中と変わってしまうことがあります。
そこで制作途中から使えるのがルツーセです。
ルツーセはフランス語ですが、
英語ではレタッチ(修正)、
日本語では「艶の修正」を意味します。
樹脂分が少ないので作品の表面を密閉せず
に空気を通します。絵の具の揮発や乾燥を
妨げないので制作途中に用いることが
できます。
また未乾燥の作品の絵の具の艶を均一に
したいときにも便利です。
画面保護の目的では効果が弱いので半年から
一年後にタブローを塗ると良いでしょう。
指触乾燥で塗れるのはタブロースペシャル
指で触って乾燥していれば使用できるのが
「タブロースペシャル」や
「ラピッドタブロー」と呼ばれるものです。
合成樹脂でつくられていて自然な光沢が
作れます。画面保護と艶出しの役割を
果たしますが、タブローよりは保護効果が
弱いのが特徴です。
乾燥した層はテレピンで除去することが
できます。
完成後にすぐに公募展などに出品したい時
などにこれがあると便利です。
艶消しのワニスはマットタブロー
画面を保護しつつ艶を消すワニスもあります。
「マットタブロー」と呼ばれるものです。
樹脂ではなくロウやシリカが混ざっていて
表面をざらざらさせる効果によってマットな
表面を作ることができます。
タブローと同じく完成後半年から一年後に
湿度の高い環境を避けて塗布します。
テレピン等で除去して塗り替えることも
できます。
ワニスのキレイな塗り方

ワニスの塗り方は簡単です。
埃がつかないように清潔な環境で丁寧に
塗っていきましょう。
水で少し湿らせた柔らかい布で作品表面の
埃をとってキレイにしましょう。
↓
柔らかい布で作品表面を乾拭きします。
↓
ワニスを塗るときに使う紙パレットや絵皿
にも埃がついてないか注意しましょう。
↓
柔らかめの平筆や刷毛で塗っていきます。
あらかじめ抜けそうな余分な毛は除去して
おきましょう。
↓
マットな質感の部分に部分的に塗って
乾かします。
↓
乾いたら全体に塗っていきます。
横方向、縦方向に均一に筆を運びます。
塗り残しがないようにしましょう。
↓
液が垂れないように平置きして乾燥
させます。埃が入らないように箱などの
かぶせものをすると良いでしょう。
タブローのはじき現象とは?

乾燥後に画面にタブローを塗ろうとしても
部分的にタブローをはじいてしまって
丸い水滴のような状態になってしまうことが
あります。油絵の具の油分や画面の汚れなど
が原因でこのような「はじき現象」が
起こります。
はじき現象が起こる部分をテレピンでよく
拭いてから再びタブローを塗りましょう。
はじき現象をそのままにして塗ってしまうと
表面に凹凸ができることがあります。
まとめ

油絵の光沢を調整したり画面を保護して
くれるワニスについて解説してきました。
ワニスはなくても油絵は描けますが
油絵独特の光沢感を演出して完成度を
高めたいときや長期保存をするときに
ワニスがあると便利です。
特に公募展へ出品するときはワニスを塗ると
作品価値が上がると思います。
ワニスで代表的なものがタブローとルツーセ
です。
目的によってタブローとルツーセを使い分け
ましょう。
簡単にまとめると…
制作途中や未乾燥の作品に使うのはルツーセ
・一時的な光沢をつける
・光沢のムラを均一にする
・画面保護の観点では効果は薄いので半年
から一年後にタブローを塗ることが望ましい
一年以上乾燥させた作品に使うのはタブロー
・ガラスのようなキレイな光沢が出る
・完成作品の画面保護になる
・テレピンなどで古い塗膜を除去して塗り
替えることもできる
指触乾燥の作品にはタブロースペシャル
・指触乾燥していれば使用できる
・展示に迫られた急ぎのニスがけに便利
・自然な光沢と画面保護効果がある
・タブローよりは保護効果が弱い
・テレピンなどで古い塗膜を除去して塗り
替えることもできる
















