こんにちは、画家の落合真由美です。
デッサンって難しいですよね。
デッサンはどんな視点で観察するか、
どの部分を意識して描くか、
見えない部分を捉えようとする想像力も必要
です。目で見た通りに正確に画面に再現
しようとすることは途方もなく難しいこと
です。ただ何か描きやすいポイントが
見つかったり、観察に夢中になれるポイント
が見つかったりするとどんどん手が進んで
いって手ごたえのある作品になったりします。
デッサンがいまいち好きになれない、
いまいち集中できない、手がなかなか
進まないという人に実践面で役立つ考え方や
テクニックをお教えします。
デッサンはテクニックだけが先行すると破綻
します。しっかり観察することは大前提
として描き進めていくための実践テクニック
として役立つものをご紹介していきます。
目次
デッサンの道具編

道具に慣れていくと道具をきっかけにして
描きやすくなったり上達することもあります。
上手く道具を味方につけて描き進めましょう。
練りゴムを使いこなす
画面につけた調子を練りゴムで押さえること
で独特で軟らかいハーフトーンを作ることが
できます。練って先を鉛筆のように細くして
白く抜いて描くこともできます。シャープな
ハイライトを作りたい場合は練りゴムを細く
して白く抜くようにすると細かい部分も
きれいに仕上げられます。練りゴムを鉛筆の
ように駆使して描くとぐんと表現力が
増します。
さっ筆を使う
さっ筆は紙を巻いて先を鉛筆のように細く
削ったものです。描いた線や調子の上を
さっ筆でこするとハーフトーンを作ることが
できます。鉛筆デッサンでも木炭デッサン
でもどちらでも使えます。部分的に暈したい
ときに便利です。
ティッシュ、ガーゼを使う
ハーフトーンを作りたい時、暈しの効果を
与えたいときに使います。ある程度画材が
画用紙に載ってきたときに軽くなでると筆跡
が暈されてふわっとニュアンスのある空間感
を作ることができます。鉛筆デッサンでは
ティッシュを使い、木炭デッサンではガーゼ
を使います。
画材の硬い柔らかいを使い分ける
質感表現を豊かにする簡単なテクニック
として画材の素材の硬さを変えることです。
鉛筆では3Hくらいの硬い鉛筆を寝かせて
側面で調子を作ったり鉛筆を立ててシャープ
な線でクリアな描写をしたり、硬い鉛筆を
上手く使いこなすことでデッサンに密度が
出てきます。
観察編

普段とは見方を変えて観察することで驚きが
あったり、新しい発見があったりします。
見慣れているモチーフやシンプルで
ありきたりなモチーフでも観察に没入できる
きっかけを掴めると思います。
立方体の基本形態を掴む

複雑な形をした立体物でも構造をよく観察
すると基本的な形態が隠れています。
ここを掴まないうちに細かい部分を描いて
しまうと正確に形を捉えることができません。
モチーフの見えない部分の構造まで
確認しましょう。
裏側はどうなっているか?
接地面はどうなっているか?
見えない部分を仮の線で描き足して
構造を見極めてから描き進めましょう。
ネガとポジの関係を利用する

ネガ(ネガティブスペース)はモチーフの周り
の余白のこと、ポジ(ポジティブスペース)
とはモチーフそのもののシルエットのこと
ですが、このネガとポジを反転させて観察
する方法があります。
背景をポジとして見方を転換して描けば自然
にモチーフの形が浮かび上がってくるもの
です。複雑なモチーフを描くときにこの転換
方法で描くと正確に描写することができます。
先入観を振り払って純粋に観察できるから
です。また何に対してのポジで、何がネガに
あたるのかを意識するとモノ同士の関係性を
明確に示せるのでデッサンに説得力が
出てきます。
描き始め編

描き始めが上手くいくとどんどん手が進んで
いきます。どこからどう手を付けていくかは
とても重要なのでしっかり意図をもって
描いていきましょう。
明暗対比で視線誘導する
人間の目は明暗の強弱が強い部分に
惹きつけられるものです。そして
対比の強いところから弱いところへと視線が
移動していく性質も持っています。
たとえば主役から奥の背景へと自然に視線が
流れていくような調子を作って視線誘導を
することができます。
まずは主役に視線が行くように主役部分で
しっかり明暗の強弱を作ります。逆に脇役の
背景部分に一番の明暗の強弱を持ってきて
しまうと背景にまず目が行ってしまうような
秩序の乱れたデッサンになってしまいます。
こうした明暗の強弱をどう作っていくかは
絵の骨格を決めるような作業で大変重要です。
実際に見えなくても意図的に明暗の流れを
作っていくことがデッサンです。
こうした明暗計画はデッサンを描き始める前
のエスキースの段階でしっかり計画して
おきましょう。
陰影のつけ方で位置関係を明確に
デッサンで必要なことはモチーフが置かれて
いる状況を説明することです。何がどの位置
でどのように置かれていて、モノ同士の
距離感はどのくらいで光はどこから当たって
いるのかなどです。描写によってこの説明を
するにはモノの接点をよく見て描くこと
です。
どの部分がどこに接しているかよく観察
しましょう。自分の視点から見えない場合は
モチーフを様々な角度から観察しましょう。
複数の入り組んだモチーフこそ、この視点で
観察して一つ一つ明確にしていくことで
位置関係がしっかり伝わるデッサンとなり
モチーフに存在感が出てきます。
稜線を描く

光を当てた時に最も暗い調子が現れる部分を
稜線と呼びます。この稜線を境界にして
直射光がさえぎられて陰の領域が出現します。
また陰の領域の中には反射光も生まれます。
稜線を境に直射光、稜線、反射光がそれぞれ
描きどころとなります。実際に稜線が見え
にくい状況でもこの法則にのっとって意識的
に観察するようにすると立体として
描きやすくなります。
稜線は形態の裏側にも繋がっていくので稜線
を描くことで隠れた形の構造を掴むことが
できます。
透視図法の活用

透視図法は画面の中に仮の地平線を目の高さ
に設定して視線のいきつく線は全て地平線上
の消失点に集まるように描いていく技法です。
奥行きのある建造物を描くときに透視図法を
活用すると建造物の大きさや奥行きを表現
することができます。
空気遠近法の活用
空気の層を通して景色を見たときに、遠景
ほど空気の層の層が厚くなるので明暗対比は
弱くかすんで見えるようになります。
近景は明暗対比が強く鮮明に見えます。
近景と遠景を線や調子の強弱によって描き
分けることを空気遠近法と呼びます。
卓上に設置した静物画を描く場合でも
この技法を活用することで実際には
そう見えなくても距離感や奥行きを演出する
ことができます。
線に強弱をつける
形が大きく変わる所は形態を説明する部分
でもあります。描く線も強調することで形の
変化の少ない部分との強弱をつけることが
できます。
描きながら「ここは形の切り替わるポイント
だから強く、ここは変化が少ないから弱く」
と意識しながら進めていきます。
形の切り替わるポイントや形が完結する部分、
表情が密集している部分、接地点などが
強い線になるポイントですし、
人物なら関節、肩、腰などがポイントです。
描き込み、仕上げ編

デッサンが楽しいと感じられたり夢中に
なったりするのは仕上げの描き込みに
集中しているときです。現実とデッサンの
なかの世界が一体になるような不思議な感覚
に陥ることもあります。
描き込みに集中していくためのポイントを
いくつかご紹介します。
粗密を表現する

デッサンの中で粗の部分と密の部分との
力の抜き差しがあることで視線が上手く
流れて見ごたえのある画面になります。
密の部分を作るには、形の変化する部分だけ
徹底的に描き込んでいくことで粗の部分との
差別化を図れます。
たとえ黒い立体物でも全体に黒い調子を
つけなくても稜線に現れる表情を描くことで
「これは黒いものだ」と説明することが
できます。
ハイライトで質感を表現する

デッサンは形態を描くプロセスと質感を描く
プロセスがあります。質感をリアルに描く
ことで作品の質が向上します。
ただ形態をしっかりとらえていないのに
表面の質感だけ追い求めることはできません。
形態の描写で土台を作ってから質感の描写に
こだわっていきましょう。
ハイライトの出方を注意深く観察することが
質感をリアルに表現するヒントになります。
モノの材質によってハイライトの出方は
変わるものです。
金属やガラス、プラスチックなどの素材に
当たるハイライトは鋭く強く明るい
ハイライトです。
マットな材質のモノには半光沢の鈍い
ハイライトが現れます。
布製品にはふんわりとした柔らかい
ハイライトが現れます。
練りゴムや暈しテクニックを使って質感を
表現していきましょう。
周囲の映り込みを描き込む
プラスチックやガラス製品などは表面に
周囲のモノが映り込むことがあります。
映り込んだ虚像は実像よりも歪んでいたり
明度が低く見えるものです。
このように実像と虚像を描き分けることも
説得力のあるデッサンに繋がります。
形が完結する部分を集中して描く

形が完結する部分(モチーフの輪郭のキワの
部分)をクリアに描くことで形をしっかり
説明することができ、完成度も上がります。
キワの部分は強く描けばよいということでは
なくキワの豊かな表情をよく観察する必要が
あります。尖っていたり、回り込むような
丸みを帯びていたり、柔らかく浮くような
感じだったり様々です。手数を増やすととも
に描き込む表情は強くなりがちですが、
手数を加えて弱く見せたり軽く見せたり
柔らかく見せたりすることもできます。
キワの表情によって弱い筆圧なのか、
硬質な画材で細かく描いていく必要がある
のかなど見極めていきます。
まとめ

これまで解説してきたように、
デッサンは道具を使いこなすこと、
観察を怠らないこと、描き始めに土台を
しっかり作ること、鑑賞者を引き込む見せ場
を作ることが大切です。
自分が観察して感動したことを夢中になって
描けば必ず鑑賞者に伝わります。
観察することも描くことも楽しんで
いきましょう。
















