こんにちは、画家の落合真由美です。
今回は油絵の具の色についてのお話しです。
油絵の具の特徴は
絵の具の透明度の高さにあります。
この油絵の具の透明度を活かして
描き進めていくことが
油絵の具の色をキレイに見せるポイント
になります。
油絵の具には透明色と不透明色があります。
それぞれの違いを理解し使いこなすことで
作品にに存在感や立体感を
もたらすことができます。
そこで今回は
「油絵の具の透明色と不透明色の違い」
について分かりやすく解説していきます。
目次
油絵の具・透明色と不透明色の見分け
油絵の具の透明色と不透明色の
一番分かりやすい見分け方としては
チューブの裏側の記載を確認することです。
透明・不透明の記載がされています。
小さなマークで表示されていて、
枠内が空白→透明色
枠内が斜線→半透明色
枠内が塗り潰し→不透明色
となっています。
特に半透明色は絵の具の色そのものを
見ただけでは分かりにくいこともあり、
不透明に見えるものが
実は半透明だったりすることもあるので
注意が必要です。
下地に重ねた時に透けて見えるものは
透明色ですが
下地を隠蔽してしまうものは
不透明色になります。
その中間が半透明色ですね。
計画的に描画したり、
完成イメージに近づけるためにも
まずは透明・不透明の把握をしておくこと
は大切です。
油絵の具・透明色と不透明色の違い
油絵の具の透明色と不透明色の違いについて
解説していきます。
それぞれ特徴があり表現できることが
違います。
油絵の具・透明色の特徴
透明色は光を通しやすく鮮やかで澄んだ発色
なのが特徴です。
色や質感に深みをもたらし、
立体的に表現することができます。
透明度を変えずに混色するなら
透明色同士で混色する必要があります。
透明色は不透明色と混色すると
色の明度を調節できますが
透明度は低くなっていきます。
色を明るくするために白を混ぜることが
ありますがその分透明感は
損なわれていきます。
透明色は乾いた不透明色の層の上から
画用液で薄く重ねていくことで
その特徴を上手く活かすことができます
ので無闇に不透明色と混ぜすぎないように
しましょう。
油絵の具・不透明色の特徴
不透明色は光を通しにくく
下の絵の具の層を隠蔽する性質を
持っています。
主に地の色を塗布する場合の使用に
向いています。
また形の輪郭や起伏を表現するのが得意です。
そのため厚みを持たせて塗布すること、
力強いタッチで描くことで
不透明色の特徴を活かすことができます。
不透明色を上手く使えば
重厚感やモチーフの存在感を表現すること
ができます。
不透明色は厚塗りするため
乾燥時間をしっかり設けたり、
乾燥促進剤を使って
上から層を重ねる時に色が混ざらないように
することが大切です。
透明色と不透明色の使い分け
基本、透明色は画用液で薄く
塗布していき、
不透明色はチューブから出した状態のまま
薄めずに使用します。
透明色と不透明色の使い方の違いとしては
情報が密集しているところは
不透明色で形の情報をしっかり描き起こし、
陰影部分や遠景、脇役など描き流す部分は
透明色で仕上げるのが一般的です。
不透明色で明部を描き込むことで
形の輪郭や起伏、表面の質感など
モチーフの情報をしっかりと伝えることが
できます。
暗部は透明色を使うことで
深みを持たせることができ
明部の描写が引き立ってきます。
不透明色の地に透明色を塗り重ねて
描き起こしていくこともよくあります。
目指す作品の方向性でも
透明色と不透明色の選び方は変わってきます。
色の層を重ねていき
繊細でニュアンスのある描写を目指すなら
透明色を上手く使うと良いでしょう。
ただ透明色だけの使用では
強い発色にはならないので
下層に不透明色を忍ばせることが必須です。
単色での発色や
マットでインパクトある画面作りをするなら
不透明色の使用が向いています。
不透明色は厚塗りでマットな質感
になりますが
不透明色だけだと画面が重たく単調で
チープに見えがちなところがあります。
それを狙ってやる分には
全く問題ありませんが
写実的に描写していく場合は
不透明色だけだと
リアリティーが出しづらくなります。
油絵の具の半透明色って？
透明度のわずかな違いで
色のトーンや画面の雰囲気に違いが
でてきます。
例えば白は一見不透明ですが、
全ての白が完全な不透明ではなく
半透明の白もあります。
画面に重厚感やインパクトのある白さ
を見せたいのか、
透明感ある繊細に作り込んだ白
を見せたいのか、
制作する意図の違いで選び方にも
変化をつけると良いかもしれません。
やはり色を一見しただけではよく分からない
ので絵の具チューブの裏書で
透明度をチェックすると分かりやすいです。
チタニウムホワイトは不透明
シルバーホワイトは半透明
ジンクホワイトは半透明
になっています。
チタニウムホワイトは
隠蔽力と着色力が最も強く
インパクトある表現に向いていますが、
シルバーホワイトやジンクホワイトは
他の色の持ち味も活かすような
半透明の発色をします。
油絵の具・透明不透明を使いこなす
透明色で表現する
色彩の深みやグラデーションは
油絵の醍醐味ですね。
絵の具の透明度の違いで
モチーフの部位を描き分けることで
重厚かつ表現豊かな画面になることは
前の章でも触れました。
明部と暗部以外では
透明色・不透明色を駆使して
どんな描き分けができるでしょうか？
遠景と近景
風景画において鮮明に見える近景を
不透明色でクリアに描き、
遠くに茫漠と存在する遠景を
透明色でぼかすように描きます。
粗密の関係、主役と脇役の関係
密度ある部分や主役部分をを
不透明色でコントラスト強めに鮮明に描き、
脇役部分を透明色主体で弱く描きます。
自分の画風や目指したい完成イメージ
によって透明色、不透明色の対比や
使う分量を調節していきましょう。
油絵の具・透明色を使った技法
透明色を使った油絵技法で代表的なものが
「グレーズ技法」です。
グレーズ技法とは
透明色を溶き油多めで
何層も薄く塗り重ねる技法のことです。
光を透過させながら色を重ねられることで
深みのある油絵独自の表現ができます。
不透明色の下地をしっかり乾かしてから
塗り重ねることが大事です。
下地が乾かないうちに塗り重ねてしまうと
不透明色と混ざりあって
色が濁ってしまいます。
上手くいくと下地の色と混ざることなく
上層の色が透けて見えるキレイさがあります。
光の屈折や反射を表現し
モチーフの立体感を出したり、
空間の奥行きを豊かに表現できます。
下地の乾燥には時間を要しますので
乾燥促進剤を使って
乾燥時間をコントロールすると良いでしょう。
油絵の具・不透明色を使った技法
不透明色を使った油絵技法で代表的なものが
「インパスト技法」です。
インパスト技法とは
不透明色を厚く塗り重ねる技法のことです。
立体感や凹凸のある質感の表現に
適しています。
ペインティングナイフや
大きめの平筆を使って絵の具をたっぷりと
ダイナミックに画面に載せていくことで
作品に重厚感や物質感をもたらします。
この技法も下地をしっかり乾かしてから
塗り重ねる必要があります。
まとめ
油絵の具の「透明色と不透明色」の違いと
使い方について解説してきました。
今まで何気なく使っていた色も
チューブの透明度の表示を見てみると
意外な発見があるかもしれません。
透明色も不透明色も層を重ねるには
しっかりと乾かすことが大事です。
油絵の具のキレイな発色や質感を
楽しみましょう。
