【油絵】迷わない筆の選び方と使い方 | 長持ちさせるお手入れ方法も解説

こんにちは、画家の落合真由美です。

今回は油絵制作の際に欠かせない
「筆」のお話しです。

油絵の筆は毛の種類・大きさ・形状
が豊富にあります。
目指す画風や使いたい技法に沿って
自分に合うものを選ぶと使いやすいです。

でもどれを選んだら良いか
迷ってしまいますよね。
そんなお悩みに対して用途に応じた
筆の選び方・使い方・お手入れ方法
分かりやすく解説していきます。

筆は毛の種類で選ぶ

油絵の筆は毛の硬さで

硬毛と軟毛

に分けられます。

描き始めは硬毛仕上げは軟毛へと
変化させていくのが一般的ですが、
硬毛だけでも満足に描くことが出来ます。

 

【硬毛】

絵の具をしっかりのせる描き始めの段階
だけでなく、
筆のストロークを活かした表現
面で形を描き起こしていく表現など
描き込みと仕上げまで担う
油絵筆の代表格。

 

豚毛

油絵の具のコシに負けない弾力があり、
硬くて丈夫な毛。
一本の毛の先端が枝分かれしているので
絵の具の絡みが良い
比較的安価で揃えやすい。

 

マングース毛

豚毛に次いで弾力がある硬めの毛。
軟毛のコリンスキーなどに比べると
コシがあり中間的な硬さの毛質。
ある程度硬さがあっても含みが良く
まとまりも良い。

 

【軟毛】 

中盤の描き込みから仕上げまで
筆跡を残さず描ける細密な描写
に向いている毛質。

 

狸毛(ラクーン)

絵の具の含みが良い。ふっくらした形状で
柔らかい毛質なので復元性が高い。
薄い層を重ねる時や微細なグラデーション
を作りたい時に。

 

馬毛

マングースより柔らかい毛質。
含みが優れている。復元性もある。

 

合成繊維

天然毛のキューティクルに近い凹凸
をつけて特殊加工した筆。
絵の具の含みは天然毛より劣るが
摩耗しにくい。比較的安価で揃えやすい。

 

コリンスキー毛(セーブル)

代表的な軟毛で非常に高価。
毛が長く流線型をしているため弾力がある。
穂先が綺麗にまとまり絵の具の含みが良く、
描き心地が良い

 

イタチ毛

コリンスキーより毛が短い。
毛質はコリンスキー同等で上質。

 

リス毛

柔らかくて細い。
コリンスキーほど弾力はないが
絵の具の含みがよく、
穂先も綺麗にまとまる。

 

筆は制作段階別に形で選ぶ

筆の大きさや形は制作段階をイメージして
選ぶと分かりやすいです。
穂先の形によって画面に反映するタッチが
違ってきます。

制作段階によって筆の大きさや形を変える
のは勿論、色を変える時も
その都度筆を洗うのではなく
色の系統別に筆を2〜3本用意して
常時使い回すようにしましょう。

 

①下地段階

ハケ
ブラシ

 

 

②下描き段階

 

太目のラウンド(丸筆)

穂先に丸みがある。
線描や細部の描き込みがしやすい。

 

 

太目のフィルバート(平筆)

穂先に角がない平筆。
面で捉える描写から線描までしやすい。

 

 

③描き込み段階

 

フラット(平筆)

エッヂのある平筆の基本形。
面取り描写に。

 

 

フィルバート(平筆)

下描きで使用した時より細いものを選んでOK

 

 

④仕上げ段階

 

ラウンド(丸筆)

細いものをチョイスし細かい部分の描写に。

 

 

⑤技法別に使用する

暈し
ワニス塗り
グラッシ技法
(乾燥した絵の具の層の上に透明色を
薄く塗り重ねる技法)

など

 

ファン

扇形の穂先は絵の具の含みが少ないので
グラッシ技法に最適。
絵の具を何もつけずに画面をなでることで
暈し効果が得られます。

 

筆を長持ちさせる為のお手入れとは?

使った後の油絵の筆は汚れを落とさずに
放置すると固まってしまいます。
筆が劣化してしまうので描き終わったら、
必ず速やかにお手入れしましょう。
長くきれいに使う為に以下の方法を
紹介します。

 

①布や紙で絵の具をよく落とす

使い古しの布新聞紙キッチンペーパー
などで拭い取り、
出来るだけ絵の具を落としましょう。

ティッシュペーパーやトイレットペーパー
は吸収力が弱く、ベトつきやすいので
避けましょう。
また、タオル地の生地は
毛羽立っていることで
筆に繊維が付着してしまうのでNGです。
柔らかい布ならOKです。

 

②筆洗は三段階で行う

絵の具の洗い残しは毛の劣化や抜けに
繋がるのできれいに落とすには、
この三段階方式がオススメです。

とき皿を三つ用意して、
それぞれに筆洗油を入れます。

一つ目で全体の汚れを洗って、
布や紙で拭き取ります。

二つ目で毛根の細かい汚れを落として、
布や紙で拭き取ります。

三つ目は仕上げ洗いです。

 

筆洗油は
クサカベ
「ブラシクリーナーデラックス」
がオススメです。


通常のブラシクリーナーの3倍の洗浄力
筆を保護してくれるリンス成分
入っています。

筆洗油を溜めておく筆洗器は
敢えて使わずに、
とき皿にその都度使う分だけ入れることで
いつでもきれいな筆洗油で
お手入れができるのでオススメです。

 

③台所用洗剤で仕上げ洗い

②の方法で十分汚れは落ちるのですが、
まだ汚れが残っている場合や気になる時は
台所用洗剤で仕上げ洗いするのも良いです。

 

④洗髪用のトリートメントをする

しばらく使っていた筆が
硬くなってしまった、
高価な軟毛筆を大事に使いたい…
など毛の柔らかさを復活させたいときは、
この方法がオススメです。

毎回するお手入れではなく、
気になった時だけの特別なお手入れです。

通常の①〜③のお手入れをした後に、
髪用の洗い流すタイプのコンディショナー
やトリートメントメント
筆にたっぷりと馴染ませてから
洗い流します。

※洗い終わった筆を乾燥させる際は
筆立てに立てておかないようにしましょう。
穂の根本に水分がたまり
劣化の原因になります。
吊り下げるか平置きするようにしましょう。

 

まとめ

油絵で使う筆の選び方とお手入れ方法
について解説してきました。

自分に合った筆を選ぶことで
手に筆が馴染んできて
自分らしい作品になっていくと思います。

また筆を綺麗に使うこと
洗練された綺麗な作品制作
につながっていきます。

筆は今まで使ったことのないもの
を開拓していくことも
新しい発見作品のアイデア
につながるでしょう。
私も筆によって作品の表現の幅が広がり
新たな方向性を見いだせたこともあります。

基本の筆以外にもぜひ
自分で興味のある筆を使ってみることも
おすすめです。

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