こんにちは、画家の落合真由美です。
今回は「シュルレアリスム」について
のお話です。
シュルレアリスムと聞くと少々難解に
感じますがルネ・マグリットの作品は
目にしたことのあるかたが多いかと思います。
見るものを奇妙で不思議な世界へと引き込む
作品を残したルネ・マグリットは
シュルレアリスムを代表する画家です。
マグリットの描いた不思議な世界を
ご紹介しながらシュルレアリスムとは何か?
一見難解でとっつきにくい作品群の
鑑賞のポイントなどを分かりやすく
解説していきます。
シュルレアリスムとダダイズム

「シュルレアリスム」とは
「ダダイズム」と呼ばれる思想を受け継いで
派生した形の芸術運動です。
「ダダイズム」は「破壊」の思想を持ち、
「シュルレアリスム」は「創造」の思想を
持っています。
ダダイズムとシュルレアリスムについて
それぞれ解説していきます。
ダダイズムとは?

19世紀終わり頃、
合理主義が社会全体を支配し、モノの見方、
感じ方まで強い制約を受けていました。
その合理主義を否定し破壊しようと起こった
のがダダイズム運動です。
ダダイズムは第一次大戦中から戦後にかけて
ニューヨークとチューリッヒの芸術家たちが
起こしました。
大戦によって既存の道徳や価値観が無意味に
なったことで反理性・反美学・反道徳の精神
が生まれました。
現実を嫌悪して、伝統的な価値や形式を否定
するためダダの芸術家たちはスキャンダルを
起こします。
ダダの代表的な芸術家として
マルセル・デュシャンが有名です。
既製品の便器に自身のサインを入れて作品と
した「泉」は大論争を巻き起こし、
芸術とは何かを世に問いただしました。
無意味性と非合理性を追求して既存の芸術の
価値観を覆す運動を起こしたのです。
シュルレアリスムとは?

ルネ・マグリット《再開》東京富士美術館蔵
「東京富士美術館収蔵品データベース」収録
(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/03740/)
ダダイズムを受けて起こった
「シュルレアリスム(超現実主義)」は
1920年代にパリで誕生しました。
シュルレアリスムは「無意味さ」や
「無意識」に新たに価値を見出そうとする
芸術運動です。
シュルレアリスムでは
夢・狂気・偶然・ユーモアが重視されました。
合理性から垣間見える「無意識」から
画家たちは想像力を働かせて作品化
していきました。
このような思想から催眠術、霊媒現象の実験、
魔術・錬金術・占星術なども再評価された
時代です。
シュルレアリスムの作品は
このようなキーワードで描かれています。
想像力
自由さ
遊び心
現実と虚構が入り混じる
神秘的
不気味で唐突な世界観
ではシュルレアリスムの画家
ルネ・マグリットについて
この後解説していきます。
ルネ・マグリットってどんな画家?

ルネ・マグリット《観念》東京富士美術館蔵
「東京富士美術館収蔵品データベース」収録
(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/03577/)
ルネ・マグリット1898-1967
1898年
ベルギー生まれ。
生涯のほとんどをベルギーの首都
ブリュッセルで過ごします。
1911年
13歳の冬、母親が自殺します。
自殺した母親が発見された時の姿が
後にマグリットが描く
人物像に反映されているとも言われています。
1916年
ブリュッセルの美術学校に入学。
様々な描き方を試みましたが
どれもしっくりこず、自分の描くイメージを
表現できないでいました。
1919年頃
ダダに関心を持ちます。
マグリットはアカデミックで上手い絵よりも
新しい開拓を試みている作品に刺激を
受けるタイプでした。
1922年
ジョルジェットという女性と結婚します。
1923年頃
ジョルジョ・デ・キリコの作品と出合います。
マグリットが漠然とイメージしていた
神秘的な世界観がはっきりと表現されている
ことに衝撃を受けます。
キリコとの出合いをきっかけに身近なもの
同士を奇妙な組み合わせで描く
「デペイズマン」と呼ばれる描法に
夢中になります。
1927年
シュルレアリスムの拠点パリへ移り、
アンドレ・ブルトンらと出会います。
1930年
ブリュッセルに帰国。
ブリュッセルの自宅で独自のスタイルを
探求します。
自分自身の想像力を研ぎ澄ませて
日常の普通の暮らしの中で
奇妙な世界を描き続けました。
1967年
逝去。享年68歳でした。
マグリットの作品は一見すると平凡な
日常風景です。
しかし鑑賞しているといつのまにか
奇妙な世界にいざなわれてしまいます。
これは本当に現実なのか?と。
マグリットは絵に自分の感情を込めずに
淡々と描きます。
日常の風景を再解釈し独特の空間に
変えてしまうのです。
現実と非現実の境界が曖昧になっていく
不思議な感覚です。
いままで普通だと思っていたことが
覆されるような感覚に陥り、
新しい世界を見たわたしたちはワクワク感
すら覚えます。
マグリットはわたしたちに
現実世界の再解釈を示唆しているようです。
鑑賞すればたちまち先入観が払しょくされ
新しい視点で世界を見ていることに
驚くはずです。
平凡な日常のなかで奇妙な世界を覗き続けた
画家、マグリット。
マグリットと同時代に活躍した画家たちに
ついてもお話します。
マグリットと同時代の画家たち

ありきたりな現実に退屈していた芸術家たち
は人間が無意識に思い描いている夢や狂気の
世界を表現しようとしました。
その大きなきっかけとなったのが
1924年10月、
アンドレ・ブルトンが
「シュルレアリスム宣言」
を出版したことです。
これにより一気に新しい風が吹き、
様々な画家たちがこの無意識の世界の表現に
挑みました。
アンドレ・ブルトン1896-1966
フランスの詩人・思想家です。
合理主義に対抗して新たな精神文化の可能性
を考えて「無意識」に基づいた表現を
見出します。
1920年からダダ運動に参加し、
1924年には「シュルレアリスム宣言」を発表
し指導者となります。
第二次大戦と共にニューヨークへ亡命し
北米や中南米にもシュルレアリスムを
広めました。
アンドレ・マッソン1896-1987
でたらめな線を引いて偶然できた形から
連想して作品にしていくスタイルです。
無意識に引いた線が作品につながっていく
ならばそれは人間の無意識が作品化したもの
だと考えました。
ロベルト・マッタ1912-2002
南米チリ生まれ。
1937年頃シュルレアリスムと出合います。
マッタは人間の無意識をそのまま作品に
しようとしました。
形もなく捉えようのない「無意識」を
そのままよく分からないものとして
描きました。マッタの作品は
形あるものが混沌に飲み込まれていくような、
その混沌の中から何か新しいものが
生まれそうな異次元空間を私たちに
提供してくれます。
ポール・デルヴォー1897-1994
デルヴォーはベルギーにてマグリットと
ほぼ同時代に生まれました。
1934年頃シュルレアリスムに出合います。
デルヴォーの作品には夢の中の出来事
のように脈絡のない動きをする登場人物たち
が描かれています。
奇妙な無意識の(夢のなかの)世界を
見せられているかのような感覚に陥ります。
まとめ

シュルレアリスムの画家たちの作品は
現実離れしていて見れば見るほど答えが
出ません。
そこが描く側も見る側も芸術への意欲が
かき立てられる部分です。
つかみどころのない人間の無意識の世界に
それぞれの画家たちのやり方でアプローチ
しています。
無意識の世界を目に見える形で表現しようと
するなんて視野が広大すぎてとても刺激的
ですね。
















