風景画の名画 | モネ・ルノワール・ゴッホ・ゴーギャン・ルソーから学ぶ描き方や考え方

こんにちは、画家の落合真由美です。

19世紀に
チューブ入り油絵の具が誕生して以来、
画家の制作場所が
屋内から屋外へと広がったことで、
様々な風景を描いた
数々の名画が誕生しました。

今回は名画の中でも
独特の視点を持つ風景画を見ていきます。

これから紹介する作品は
ルノワール、モネ、ゴッホなど
誰もが知る巨匠たちが描いたものです。
美術ファンでなくても見たことがあったり
好きな方が多いのではないでしょうか?

それぞれの巨匠たちの作品から
鑑賞ポイントだけでなく
題材、テーマ、構図、色使い、描写方法
など上達のためのヒント
探っていきます。

ルノワールの風景画

「海の景色」1879

 

オーギュスト・ルノワール1841-1919

フランス中南部のリモージュ生まれ。

ルノワールは
「印象主義」の代表的な画家です。
印象主義は19世紀後半、
フランスのパリで起こった芸術運動です。
屋外での制作がメインで、
現実世界を写実的に描く写実主義とは違い
主観的な目線で
自分の見た「印象」を描いていました。

その瞬間の光の鮮やかな印象を
描写していくために
絵の具をパレット上で混ぜずに
チューブから出した絵の具を
短いストロークで
置いて描いていく描き方が特徴です。
この描き方を「筆触分割」と言います。

ルノワールの作品の
素敵なところは
光を綺麗に捉えていて
色の発色の良さや
画面が華やかで明るいところ、
描き手の楽しさが伝わってくる
ところだと思います。

またルノワールは細部を省き、
強い光を受けた草原などの広大な風景を
描きました。

ルノワールの色の並べ方

「湖のほとり」1879-1880

 

ルノワールの大きく全体を捉える描き方は
絵を描く上で大切な見方です。
描き進めるとつい部分的な見方に
なってしまって
遠近感や全体の辻褄が
狂ってしまいがちです。
刻々と変化していく天候や太陽光も
素早く正確に捉えています。

またクリアでナチュラルな色使いも
ポイントです。
初期のルノワールは
自然界に存在しない黒の代わりに
青を使っていたと見られます。
暗い部分を絵の具を黒を使わずに
自然界に存在する青を使うことで
自然の光の印象を再現しました。

油絵の具を扱う際は
絵の具を「並べる・重ねる・混ぜる」
のどれかになりますが、
油絵の具は乾く前に無闇に重ね塗りすると
色が濁ってしまいます。
絵の具を効果的に並べてクリアな発色を
実現しています。

 

モネの風景画

「ザ ビーチ アット サント アドレス」1867

 

「ノルマンディー鉄道、サン・ラザール駅の到着」1877­

 

「クリフ・ウォーク・アット・プールビル」1882

 

 

クロード・モネ1840-1926

フランスのパリ生まれ。

モネも「印象主義」の代表的な画家で
戸外制作を重視し、
空気の美しさや日光、反射光の印象を
描写しました。
光そのものを表現するために
形を明確に描かず、柔らかい色使い
魅力的です。

天候、時間、季節による風景の表情の変化
を描きとり臨場感のある表現を
得意としました。

モネもルノワール同様、
筆触分割の手法をとっています。
モネといえば積み藁や睡蓮、
大聖堂の連作が有名ですね。

モネの探究心と精神力

「小麦の山(夏の終わり)」1890-1891

 

「ジヴェルニー近郊のセーヌ川支流(霧)」1897

 

「睡蓮」1906

 

同じ場所やテーマで
天候・時間・季節の異なる表情の違いを
連作していますが、
その瞬間の光や取り巻く空気を描く
という捉えどころのない繊細な手仕事に
感動します。
ただ写真に撮るだけでは叶わない
人の目で見た時の場の雰囲気を表現できる
のは絵画だからこそなせる技ですよね。
光を繊細に捉えていく職人性は勿論、
長きに渡って
同じテーマに向き合っていける
探究心や精神力の高さも感じます。

 

ゴッホの風景画

「プロヴァンスの農家」1888

 

「詩人の庭」1888

 

フィンセント・ファン・ゴッホ1853-1890

オランダの南部の
フロート・ズンデルト生まれ。

ゴッホは色やタッチが鮮明で荒々しいのが
特徴です。
内面の狂気や精神的不安定さも
作品に反映されていて
引き込まれてしまいます。

ゴッホは田舎を放浪して観察した
自然風景を描きました。
南仏アルル明るく描いた風景画や
穏やかな田舎の田園風景などが有名です。

ゴッホの色彩感覚と構成力

「緑の小麦畑、オーヴェル」1890

 

ゴッホは空気遠近法
(近いものほど鮮明に、
遠いものほど霞んで見える性質を
表現する技法)を使わずに
太い輪郭線で平面的に描いていますが、
バランスのとれた構成力が特徴です。

構図や色彩感覚色面構成
的確で安定感があります。
彩度の高い色を使いこなせる
色彩センスも魅力的です。

日本では江戸時代に浮世絵が盛んでしたが
浮世絵は鮮やかな色使いや平面的な描写、
主題が引き立つ的確な構図や色面構成が
特徴です。

これらの特徴は
ゴッホの表現と共通するものが
ありますよね。
ゴッホ自身も浮世絵に
大変影響を受けたようです。
ゴッホの作品が日本人にも
とても愛されている理由は
ここにもあるのではないでしょうか。

色彩センスや知識がなくてもOK | 初心者もできる調和のとれた色の組み合わせ

ゴーギャンの風景画

「ブルターニュの風景」1888

 

「ブルターニュの干し草の山」1890

 

「ル・ポルドゥの風景」1890

 

ポール・ゴーギャン1848-1903

フランスのパリ生まれ。

ゴーギャンは目に見えない内面や
神秘的な思想の表現が特徴で
メッセージ性のある作品を生み出しました。

束縛から逃れ自由に生きるために
タヒチに滞在し
自然豊かな風景を描いています。

厳かで活気に溢れた構図を取り、
モチーフをデフォルメして描き、
太い輪郭線で平面的に表現しています。
ゴーギャンも日本の浮世絵に
とても影響を受けたようです。

ゴーギャンは「総合主義」という
絵画思想を作った代表的な画家です。
「総合主義」とは
現実と想像、主観と客観、
感覚と思想の総合的なアプローチによって
絵を描いていこうとする考え方です。

総合主義の特徴としては

写実をしない
遠近法と陰影描写をしない
記憶と感情を交える
彩度の高い色を使う
平坦な描写
ミニマルで幾何学的な構図

などがあげられます。

ゴーギャンの表現力

「なぜ怒っているの?」1896

 

ゴーギャンの作品は
現実と想像が混在していて
神秘的なメッセージ性があるところが
ゴーギャン独自の世界観を
作っています。

ただ見たままを描くのではなく
作品に自分の思想を載せているので
引き込まれます。
発色の良い色使いも綺麗ですし、
主題や考えを伝えるための
構図や色面構成
工夫しています。

 

ルソーの風景画

「森の中のランデブー」1889

 

「赤道のジャングル」1909

 

 

アンリ・ルソー1844-1910

フランス生まれ。

独学で絵を学んだ人ですが、
色彩感覚にすぐれ、
幻想的な雰囲気で描く画家です。
細かい描写ができる繊細な感覚を
持っていますが、
平面的な捉え方で
遠近感や大きさの対比の概念がないことも
知られています。

デッサン力は劣りますが
「素朴さ」というところに
味わいがある画家です。

当時の批評家たちには
評判が悪かったのですが
同業の画家たちには評価されていました。
デッサン力の稚拙さが
かえって魅力になっているということで
「素朴派」と位置付けられていました。

この素朴派は
フォービズム
(目に映る色彩ではなく
心が感じる色彩を表現する活動)や
キュビズム
(モチーフを幾何学的に変化させて
構成することで表現する活動)
と同時に起こりました。
ルソーは既存ルールを破って
独自の価値を見出した点において
現代美術の先駆者の一人とされています。

ルソーの独創性

「猿のいる熱帯林」1910

 

既存のルールに捉われずに
自我を貫くことは大変なことです。
自由に自分の描きたいように描き、
純粋に描くことや芸術を楽しむということ
は絵を学べば学ぶほど
難しくなりがちです。
上手くなるためには
こうあるべきという
呪縛に囚われてしまうからです。
ルソーの描き方には一切迷いがなく
独自の視点で描き切っているところが
魅力ですね。

 

風景画の名画 | まとめ

今回は風景の名画についてのお話でしたが
印象派のルノワールとモネ、
印象派の影響を受けつつ
時には反対しながら
独自のスタイルを見出した
ゴッホとゴーギャン、
素朴派のルソーを取り上げて
巨匠たちの独特の視点を解説しました。

巨匠たちは
見たことを写しとる技術だけではなく
どんな視点で観察するのかとか
自分の思想や感覚を取り入れたり
自己表現していく技術
磨いてきたのだと感じます。
そのように見ていくと
風景画にもストーリーがあり、
絵を学ぶ上でも
観察力と同時に感性や表現力も
磨いていくことが大切だなと
実感できます。

風景画を上手く描くコツ|初心者も取り組みやすい題材・構図・技法の具体例を紹介

油絵とは?水彩・アクリル画との違い|初めてでも簡単に分かる油絵の歴史

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です