油絵の具が乾燥する仕組みは?疑問をすっきり解消|簡単にできる早く乾かす方法とは?

こんにちは、画家の落合真由美です。
油絵の具は乾くまでに時間がかかる画材です。
なぜ時間がかかるのでしょうか?
早く乾かすことはできるのでしょうか?
油絵の具が乾燥する時間をコントロール
出来たらもっと自分のペースで制作に
取り組めるようになるかもしれません。
油絵を始めたての方でも「油絵の乾燥」を
味方につけることで油絵の具はもっと身近に
楽しむことができます。
今回は「油絵の具の乾燥」にまつわる疑問
すっきり解消し、乾燥時間をコントロール
する方法を詳しく解説していきます。

油絵の具の乾燥を早めるのは○○

油そのものはドロッとした流動的なもの
ですが、油の分子同士が空気中の酸素を媒介
として結合すると固まる現象が起きます。
つまり油絵の具が乾燥した状態ですね。
これを科学用語では「重合」と呼びます。
水彩絵の具やアクリル絵の具は絵の具の中の
水分が蒸発することによって乾きます。
油絵の具が水彩絵の具やアクリル絵の具
と大きく違うのは油絵の具が酸化重合
によって乾燥する画材だからです。
油絵の具と水彩絵の具とでは
乾燥するメガニズムがずいぶん違う
ということです。

 

水彩絵の具やアクリル絵の具

蒸発(揮発)による乾燥

 

油絵の具

酸化重合による乾燥

 

油絵の具は
油の分子と空気中の酸素が結びつくこと
によって乾燥が進む画材ですが、
スムーズな結合を促し乾燥させるためには
3つの条件が必要です。

その3つの条件とは…

十分な酸素

適切な温度

50%以下の湿度

です。

つまり環境を整えれば
油絵の具の乾燥を早めることができます。
室内に風を入れたり、乾燥に適した温度や
湿度にしたり、乾燥促進のためにできること
がありますので詳しく解説していきます。

 

十分な酸素
窓を開けたり扇風機で風を起こして
新鮮な空気を室内に取り込みましょう。

 

適切な温度
油の乾燥に適した温度は25℃から40℃くらい
で季節で言うと春、初夏、秋ごろになります。
24度以下になってくると
乾燥時間が遅くなっていきます。
絵の具に表示されている乾燥日数の目安は
25℃前後の室温を想定していますので室温に
よって乾燥日数も変わっていきます。
基本的に温度が10℃違うと乾燥させるのに
2倍の日数がかかります。
10℃から20℃くらいの冬の気温では乾燥日数
に2倍の日数を要することになります。
夏は温度は上がりますが高い湿度の影響で
それほど乾燥は進みません。
夏場は除湿することが大事ですね。

 

50%以下の湿度
梅雨時期や夏場は除湿したり風通しを
良くすることが大切です。

 

これらの3つの条件である
酸素、温度、湿度を上手くコントロールする
ことで乾燥時間を短縮できたり、乾燥時間の
目安を知ることができます。

油絵の具の厚みで乾燥時間が変わる

メーカーが絵の具などに表示している
乾燥日数の目安は筆で薄く塗った場合
想定しています。
厚く塗る場合、厚くなった倍数の二乗に
比例して乾燥が遅くなります。
厚みがになれば乾燥には4倍の時間が
かかります。
4倍の厚みになると16倍の時間がかかること
になります。
画面に絵の具を載せていく際は
薄塗りを何層も重ねていったり、
シッカチーフや速乾メディウムで乾燥を
促進させたり、モデリングペーストを
使う方法があります。

シッカチーフで油絵の乾燥を早める

シッカチーフとは
油絵の具の乾燥促進剤のことです。
溶き油や絵の具に直接混ぜて使用します。
画面全体に使用したり乾燥を早めたい場所
だけに部分的に使用することもできます。

シッカチーフの主成分は
コバルト塩
マンガン塩
鉛塩
です。

これらを金属塩と呼び、油絵の具の
酸化重合反応を促進して乾燥を早めることが
できます。
これらの金属塩は
酸素を呼び込んたり、油脂の結合を
促進させたり、過酸化物を取り除いたりする
働きを持っています。
コバルト塩、マンガン塩、鉛塩の
それぞれの働きを説明します。

 

コバルト塩
最も強力な乾燥促進剤です。
塗膜の表面を早く乾燥させる働きをします。

マンガン塩
塗膜の内部を含め塗膜全体を均一に
乾燥させる働きをします。
コバルト塩と組み合わせることで効果的に
絵の具の乾燥を促進します。

鉛塩
塗膜の内部からの乾燥を促進します。
無色のホワイトシッカチーフに
含まれています。

 

シッカチーフを一度に多量に使うと
表面だけ乾燥が進んでひび割れシワ
発生してしまいます。
シッカチーフは使用量を守って正しく使う
ことで効果を発揮します。
リンシードなどの溶き油に混ぜる場合は
溶き油とシッカチーフの割合7:3くらい
にします。
油絵の具に混ぜる場合は
絵の具とシッカチーフの割合9:1くらい
にします。絵の具に対してほんの数滴ほど
ですね。
シッカチーフを使用すると早くて当日から
数日で絵の具を乾燥することができます。
当然絵の具の厚みや気温によって乾燥時間は
変わってきます。薄く塗った場合は
当日中くらいに乾燥しますが
厚塗りした場合は一週間くらいかかって
しまうことがあります。絵の具の厚みにも
注意しましょう。

シッカチーフには
無色のホワイトシッカチーフと
褐色のブラウンシッカチーフがあります。
使用する絵の具によって選ぶと良いでしょう。

 

ホワイトシッカチーフ
無色
穏やかな乾燥促進効果
絵の具の層の内部まで乾燥を促進する
ホワイトや淡色系の絵の具に使用できる
多量の使用で黄変することがあるので注意
シワやひび割れができにくい

 

ブラウンシッカチーフ
褐色
強力な乾燥促進効果
主に画面表面の乾燥を促進する
使いすぎるとシワやひび割れの原因になる

 

乾燥が早い油絵の具を使う

速乾性のある油絵の具を使うことも乾燥時間
の短縮になります。
「クイック油絵の具」という販売名で
売られていて色調を維持しながら乾燥時間を
短縮することができます。
亀裂や黄変なども起こらないように
研究して作られているようです。

また絵の具に使われている顔料によって
乾燥が早いものもあります。
バーントアンバー
コバルトブルー
プルシャンブルー
ビリジャン
シルバーホワイトなどです。

【初めての油絵】油絵の具でオススメの色 | この14色があれば大丈夫!

リンシードオイルは乾燥が早い

溶き油はリンシードオイルとポピーオイルが
代表的ですが比較的乾燥が早い油が
リンシードオイルです。

リンシードオイル
比較的乾燥が早い
乾燥後に黄変しやすい

ポピーオイル
比較的乾燥が遅い
乾燥後に黄変しにくい
乾燥後に亀裂が起こりやすい

どちらを選ぶかは乾燥時間を優先させるか
黄変のしにくさを優先させるかで選ぶと
良いでしょう。

【初めての油絵】油絵で使う油のオススメ | 種類や使い方をやさしく解説します

厚塗りするときは速乾メディウムを使う

厚塗りをした場合、油絵の具の表面が先に
乾いて内部はしばらく未乾燥のままです。
内部まで乾かすには長い日数がかかりますが
そのうちに表面が縮んでシワが発生して
しまいます。内部まで一気に乾燥させるには
速乾メディウムを使うと効果的です。
油絵の具に直接混ぜると大幅に乾燥時間を
短縮することができ数時間で乾燥させること
ができます。厚く塗っても皴や亀裂が起こる
ことはありません。
しかし、メディウムを使いすぎると絵の具の
質や見た目が変わってしまうので
注意しましょう。

凹凸の表現にはモデリングペースト

 

モデリングペーストで凹凸のある質感
生み出すことができます。
モデリングペーストとは大理石の粉末と
アクリル樹脂でできているパテ状の下地材の
ことです。ペインティングナイフや筆などを
使って6mm程度の厚みで塗り乾燥させます。
塗るときの道具によってさまざまな質感を
生み出すことができるのが魅力です。
一度に厚く塗るとひび割れる恐れがあるので
注意しましょう。
塗った後は3日間程じっくり乾燥させます。
厚く塗った場合は内部まで完全に乾燥する
まで一週間程度かかる場合があります。
表面が乾いていても内部が未乾燥の場合が
あるので完全に乾くまでじっくり
待ちましょう。
モデリングペーストに油絵の具を混ぜること
はできません。
分離したり、乾燥が妨げられる可能性が
あります。あくまで下地材として使い、
乾燥したら油絵の具で描くことができます。
また油絵の具で描いた上から
モデリングペーストを塗ることは
避けましょう。
剥離してしまう恐れがあります。
モデリングペーストを使うことで
厚みのある表現や立体的なテクチャーを
生み出すことができます。
油絵の具単体では表現できない独特の質感を
生み出すことができます。

制作中に出た油のごみは発熱する?!

リンシードなどの溶き油が酸化重合する
(乾燥する)過程ではわずかにが発生します。
外気に触れれば冷やされますが、
油でしみた布や紙をゴミ箱などに押し込んで
密閉すると熱が発生することがあります。
温度の高い環境では発火の恐れもあるので
捨てる際にを含ませるようにしましょう。

まとめ

油絵の具の乾燥のメカニズムについて
解説してきました。
乾燥する仕組みを知ることは油絵の知識を
大いに深めてくれます。
乾燥を促進させることで油絵はだいぶ
描きやすくなります。

乾燥を促進させるポイントはこちらです。

 

酸素、温度、湿度をコントロールする

シッカチーフとメディウムを活用する

絵の具の厚みを調節する

速乾性のある油や絵の具を使う

厚塗りにはモデリングペーストを使う

 

また乾燥促進だけにこだわるのではなく、
未乾燥や半乾きの状態を活かした暈しの表現
も油絵独特の深みや繊細さを生み出します。
絵の具の扱いを楽しんでいきましょう。

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