有名人気画家「ヨハネス・フェルメール」を簡単解説|フェルメールブルーとは?

今回は日本でも人気の高い画家、
ヨハネス・フェルメールについて解説します。

フェルメールと言えば
光と影を巧みに演出した作品
「フェルメールブルー」と呼ばれる
印象的なウルトラマリンブルーを使った作品
が有名で世界中の人々を
今なお魅了し続けています。

人々を惹きつけるフェルメール作品は
どのようにして生まれたのか
フェルメールという画家のバックグラウンド
を分かりやすく解説していきます。

フェルメールとバロック美術

ヨハネス・フェルメールは
1632年オランダ、デルフトで生まれ
生涯デルフトで暮らしました。
21歳から画家活動を始め、
1675年、43歳で逝去しています。

フェルメールは16世紀末から18世紀半ば頃
までに起こった美術様式・バロック期を
代表する画家です。

バロック美術とは「ゆがんだ真珠」
意味します。
「ゆがんだ真珠」の真珠とは
ルネサンス時代のことで
それまで発展してきたルネサンス美術の
「理想的で均衡の取れた画面構成」を
意図的に崩す様な美術様式の動き
起こってきます。

この頃は宗教改革により
カトリックとプロテスタントの争い
が起きていました。
プロテスタントはキリストを模した偶像崇拝
を禁止していましたが、
偶像崇拝推進派のカトリックは
プロテスタント側に流れてしまった信者を
奪還しようと、よりダイナミックで
ドラマチックな表現を画家に依頼し
人々を惹きつけようとします。
こうして生まれたのが「バロック美術」です。

フェルメールの他にカラヴァッジョ、
ルーベンス、ベラスケス、レンブラントなど
の巨匠たちが活躍しました。

バロック美術はダイナミックで
ドラマチックな表現として
光と影のコントラストを強く描くことで
登場人物に視線を誘導し
画面に動きを生み出します。
使われる色彩は深みがあって情熱的です。
また宗教や神話にまつわる作品だけでなく
風景画、風俗画、静物画、一般人の肖像画
盛んになっていきます。

フェルメールは風俗画を得意としました。
フェルメールの作品にはバロック美術特有の
ダイナミックな動きはほとんど
感じられませんが、明暗を強調した画面作り
や日常の何気ない場面を切り取った風俗画
という点では共通しています。
また故郷デルフトの風景を描いた作品も
有名です。

プロテスタントの国であるオランダは
裕福な市民が楽しむための作品が
求められたからです。

フェルメール作品の特徴

フェルメール作品は当時
高い評価を受けていました。
またフェルメールの死からおよそ100年後の
19世紀ごろからも再び評価され始めます。

フェルメールは「光の画家」
とも呼ばれており
光と影の使い方がとても巧みです。
薄明かりに浮かぶ人物の日常のひとコマ
静謐で繊細な描写で描きました。
鮮やかな色使いも印象的です。
フェルメールは生涯で描いた作品数は
少ないですが、どの作品も高い評価を
受けています。

またフェルメール作品のほとんどは
小さなサイズで描かれています。
オランダは独立後に新教である
プロテスタントを信仰しはじめたことで
教会などからの大規模な絵の発注がなくなり、
買い手のほとんどは自宅に飾る絵を求める
裕福な市民ばかりになってきていました。

そのため小さなサイズの
風俗画、風景画、静物画などが
流行したことが背景にあります。

フェルメールの描写力

フェルメールの作品が
私たちを惹きつけるのはなぜでしょう?
その手法や魅力を解説していきます。

フェルメールの作品の
鑑賞者を惹きつける独特の存在感は
主役と脇役の分かりやすい描き分けによって
鑑賞者に主題が伝わりやすくなっている
ところにあります。
フェルメールは日常の情景を
リアルに描いていますが、
全部を細かく描いているわけではありません。
暗部や脇役部分は手数を減らして
描き流しています。


その分主役は緻密に細部まで徹底して
描写することで鑑賞者を惹きつけ
見応えのある画面に仕上げています。
またモチーフの数を最低限に絞ることで
主題を引き立たせています。


輪郭線を見てみると強調せずぼかしている
ことが分かります。
この描法によって人物の佇まいが自然で
立体的に見えるのです。


背景はシンプルに処理されています。
これも人物を引き立たせるための仕掛けです。
画家が見せたい主題に目が行くように
鑑賞者の目線を誘導しているのです。

またフェルメールといえば
自然光を取り入れた描写が得意です。
この柔らかく差し込んだ自然光によって
室内の人物や家具が自然と
浮かび上がるように目に入るのです。

フェルメールはこの自然光の
光と影のグラデーションを
丁寧に追っていますね。

作品のために理想的な光の当たり方を
創作しているのですが、
これによってどこか現実世界とは違う
フェルメール独自の神秘的な世界観
作り出しています。

フェルメールの描法

<ポワンティエ技法>

フェルメールは作品にポワンティエという
技法を使っています。
ポワンティエとはフランス語で「点線」
という意味で
光が反射する箇所を白く点描する技法です。
この技法は静物の質感を再現するために
研究されたものです。
フェルメールは非現実的な箇所に
光の点描をしています。
鑑賞者の視点が集中する箇所に狙って
光の点描をしているのです。
この技法を使うことで
モチーフの形態が立体的になったり
実際に太陽の光が差し込んでいるかのような
柔らかい印象をもたらします。

<シンプルな色使い>

フェルメールは色を多用せず
青赤黄と白を主体として描いています。
色使いをシンプルにすることで
主題を引き立たせているのです。

 

<小窓から自然光が入る描写>

バロック時代のダイナミックな光の演出と
比較すると自然光を用いることで
落ち着いたフェルメール独自の雰囲気を
作り出しています。

 

「フェルメール・ブルー」とは?

「牛乳を注ぐ女」1658-1659

 

フェルメールは
貴重で大変高価な顔料ラピスラズリ
原料とするウルトラマリンを使って
この「牛乳を注ぐ女」を描きました。
当時ラピスラズリは純金と同等の価値
がありました。

このウルトラマリンのブルーは
フェルメール作品に特別な存在感をもたらし、
「フェルメール・ブルー」と呼ばれています。

フェルメール作品の中でも傑作と呼ばれる
この作品には「フェルメール・ブルー」
が惜しみなく使われています。
青も部分が輝いて特別な存在感を
放っていますね。
人物の描き方を見てみると
壁の色と人物とのコントラストを
操作することで人物の印象が
強調されています。
手前の壁を暗くする反面、
人物にハイライトを当て、
さらに奥の壁を明るくする反面、
人物に強い陰影をつけています。
こうした強いコントラストによって
日常の風景なのに人物がドラマチックに
浮かび上がり特別な存在感をもたらします。

またこの作品にはポワンティエ技法も
使われています。

まとめ

バロック美術を代表する画家
ヨハネス・フェルメールについて
解説してきました。
独自の技法で人々を惹きつける作品を
生み出したフェルメール。
彼の絵に仕掛けられた描写マジックを
感じとりながら鑑賞してみてください。

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