絵画鑑賞初心者にオススメの写実主義作品・風景画・肖像画|美術史の年代順に簡単解説

こんにちは、画家の落合真由美です。
「絵画鑑賞」と聞くと
一部の美術ファンだけのものというイメージ
が少なからずありますが、
ちょっとでも興味があっても
難しくとらえてしまって敬遠してしまうのは
もったいないことです。

美術ファンであってもそうでなくても
絵画鑑賞で得た体験は感性が豊かになったり
癒しになるだけでなく、
意外な場面で話題のひとつになり
自分自身の知的財産にもなっていきます。

今回は絵画鑑賞にあまりなじみのない方でも
分かりやすく楽しんで鑑賞できる
絵画鑑賞のおすすめのジャンルについて
解説していきます。

 

絵画鑑賞は西洋美術が人気

絵画鑑賞では
西洋美術が圧倒的に人気のようです。
日本画と比べると西洋画は
立体感や遠近感のある写実的な表現
をするため鑑賞者は引き込まれやすく、
感情移入もしやすいので
分かりやすいところが人気の理由
なのかもしれません。

西洋美術では様々な様式が
生み出されてきた歴史があります。
その中から美術鑑賞初心者でも
画家の意図をくみ取りやすく
楽しんで鑑賞しやすいジャンルを
ご紹介していきます。

私がオススメしたい美術鑑賞のジャンルは

写実主義画家の作品

風景画

肖像画

です。

 

オススメジャンル①写実主義の作品


写実主義とは
19世紀中頃フランスを中心に起こった
美術運動のことです。
それまでの時代は神話や宗教、貴族たちを
テーマとした理想とする美しさを
追い求めるような描き方がなされてきました。
しかし、それらを否定するように
起こったのが「写実主義運動」です。
写実主義の画家たちは
モチーフを美化せずに
ありのままの現実や日常を客観的に
描きました。
時には野暮ったく不格好な物でも
表現の立派な題材であると捉え
ためらいなくリアルに描くことに徹しました。
労働者や農民、自然風景などが
モチーフとなり、画家の高い技術や
鋭い観察力によって
見るものが引き込まれる味わい深い作品が
多く生み出されました。

日常風景のリアルな描写は
鑑賞していて感情移入しやすいですし
リアルな描写に自然と引き込まれます。

代表的な写実主義の画家たちをご紹介します。

 

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
1796-1875


理想化することなくありのままの姿で
詩情豊かに描いた風景画が傑作です。

 

オノレ・ドーミエ 
1808-1879


鋭いまなざしで当時の人々の現実を見つめ、
強烈な社会批評を込めた作品を残しています。

 

 

ジャン=フランソワ・ミレー
1814-1875


農家の生まれであるミレーは農民の日常を
繊細に表現した作品を描きました。

 

ギュスターヴ・クールベ
1819-1877


独自の視点で労働者や一般の人々の生活を
描き写実主義運動の中心人物として
知られています。

画家クールベってどんな人?写実主義運動の先駆者となった生涯や作品の特徴を簡単解説

 

エドゥアール・マネ
1832-1883

パリの情景や人々を
伝統的な技法にとらわれず
写実性に平面的な要素を取り入れたような
描写で革新を起こしました。

 

アンリ・ファンタン=ラトゥール
1836-1904


花や果物などの鮮やかで瑞々しい瞬間の様子
を感性豊かに描きました。

 

これらの写実主義の画家たちは
形態、遠近感、光と影、色を正確な描写力
表現していて見ごたえのある作品
になっています。

 

オススメジャンル②風景画

風景画の鑑賞は安らぎや癒し
を与えてくれます。
絵を見ながら光や風、気温、自然のざわめき
や空気の匂いを想像してみると
実際にその場で体感しているような錯覚
に陥ります。
歴史画は描かれた時代背景やテーマが
分からないと難しく感じがちですが
風景画は見たままを感じ取って
楽しむことができます。

美術史の流れとともに風景画も
様々な表現がなされてきました。
それぞれの時代ごとにオススメの画家を
ご紹介していきます。

 

北方ルネサンス(緻密で写実的な表現)

アルブレヒト・デューラー
1471-1528


繊細で精度の高い描写が特徴です。

 

ピーテル・ブリューゲル
1525-1569
風景画と民族画を融合させたような作風です。

 

マニエリスム(技巧的、作為的な様式)

エル・グレコ
1541-1614
独自の画法を貫き、劇的で臨場感のある作品
を描きました。

 

バロック(豪華絢爛な躍動感ある表現)

ピーテル・パウル・ルーベンス
1577-1640
生命力にあふれた力強くシャープな筆さばき
が特徴です。

 

ディエゴ・ベラスケス
1599-1660
高い観察力と細やかな描写が見所です。

 

レンブラント・ファン・レイン
1606-1669
ハッキリとした明暗の描写によって
立体感や存在感を表現しています。

 

ヨハネス・フェルメール
1632-1675
光を巧みに捉えたクリアな描写をしています。

 

ロココ(鮮やかな色彩と甘美で優美な世界観)

ジャン・オノレ・フラゴナール
1732-1806
繊細な描写と明るい色彩で
爽やかな雰囲気です。

 

アカデミスム(保守的で正統派な表現)

ジャン=レオン・ジェローム
1824-1904
中近東、アフリカの景色を描きました。

 

ロマン主義(作品に物語があり大胆な構図)

フランシスコ・デ・ゴヤ
1746-1828
見る人に強い印象を与えるメッセージ性
があります。

 

ウィリアム・ターナー
1775-1851


大気、光、水など流動的な自然の描写を
得意としました。

画家ウィリアム・ターナーの生涯とは?作品の特徴や印象派との関わりについて分かりやすく解説

 

バルビゾン派(自然風景と農民の日常を描く)

ジャン=パティスト・カミーユ・コロー
1796-1875
繊細な色遣いで心象風景を描きました。

 

テオドール・ルソー
1812-1867
自然のありのままの姿を生々しく描きました。

 

コンスタン・トロワイヨン
1810-1865
牛や羊などの家畜を描いた作品が魅力です。

 

ジャン・フランソワ・ミレー
1814-1875
農民の素朴な生活をありのままに描きました。

 

シャルル・フランソワ・ドービニー
1817-1878
オワーズ川、セーヌ川、海岸などを
題材とした作品を描き「水の画家」とも
言われ、水辺の情景を素早いタッチで
描きました。

 

ナルシス・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ
1807-1876
ルソーの影響を受けて写実的に風景を
描きました。

 

ジュール・デュプレ
1811-1889
大樹、波、荒れた空などを描き
躍動感ある筆遣いでドラマチックな風景画
を描きました。

 

ラファエル前派(繊細で鮮やかな描写)

ジョン・エヴァレット・ミレイ
1829-1896
草花の精緻な描写が特徴です。

 

ウィリアム・ホルマン・ハント
1827-1910
鮮やかな色彩と細密描写、詩的な表現が
特徴です。

 

印象派(色彩や光の印象を描いた)

クロード・モネ
1840-1926


光が刻々と移り変わる様子を描写しました。

 

カミーユ・ピサロ
1830-1903
農村や田園風景を描きました。

 

ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
1834-1903
全体感を重視し色彩と構図の調和を追求した
作品を残しています。

 

アルフレッド・シスレー
1839-1899
穏やかで水平垂直の構図と奥行きが特徴です。

 

ベルト・モリゾ
1841-1895
自然の緑を基調とした穏やかな作風です。

 

後期印象派(独断的な形態や色の表現)

フィンセント・ファン・ゴッホ
1853-1890


大胆な色遣いと自由で活き活きした表現が
魅力です。

 

ポール・ゴーギャン
1848-1903


平坦な色面と太い輪郭線での独自の画風を
確立しました。

 

ポール・セザンヌ
1839-1906


あらゆる角度からの観察で独自の空間表現
をしました。

画家セザンヌを分かりやすく解説【印象派の影響を受けキュビズムの先駆けになった人】

 

象徴主義(人間の苦悩などを象徴的に描く)

アルノルト・ベックリン
1827-1901
幻想的で神秘的な表現をしています。

 

エドヴァルド・ムンク
1863-1944
うねるような筆致とインパクトある色彩が
特徴です。

 

ナビ派(秩序ある平面の表現を追求)

エドゥアール・ヴュイヤール
1868-1940
大胆で装飾的に風景を描写しました。

 

ピエール・ボナール
1867-1947
室内風景などの身近な題材に内面を
反映させました。

 

素朴派(稚拙さはありつつ独特の魅力をもつ)

アンリ・ルソー
1844-1910


色彩感覚に優れ幻想的な雰囲気の描写
をしました。

 

ウィーン分離派
(19世紀の伝統芸術からの分離を目指した)

グスタフ・クリムト
1862-1918
神秘的な雰囲気の風景画を残しています。

 

ドイツ表現主義
(大胆な色彩感覚と抽象的な表現)

エルンスト・ルートヴィッヒ・キルヒナー
1880-1938
原色系の鮮やかで大胆な色使いが特徴です。

 

パウル・クレー
1879-1940
ユーモアや精神性を感じる作風です。

 

20世紀アメリカン・リアリズム

アンドリュー・ワイエス
1917-2009
20世紀アメリカ、リアリズムの画家
アメリカの田舎の心象風景を
表現豊かに描きました。

 

オススメジャンル③肖像画

肖像画はその時代の人物の個性や魅力が
表現されていて、その人の人生を
垣間見るように共感したりしながら
楽しむことができます。

代表的な肖像画家をご紹介します。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ
1452-1519


「モナ・リザ」が有名ですね。
人物の輪郭をはっきり描かずに
スフマートというぼかし技法で描き、
背景は空気遠近法で描かれています。

 

レンブラント・ファン・レイン
1606-1669


バロック期に活躍した画家です。
光と影を強調した描き方で人物を
ドラマチックに描いています。

 

ヨハネス・フェルメール
1632-1675

フェルメールは女性をモデルに描いた作品が
数多くあります。
こちらは「牛乳を注ぐ女」ですが
「真珠の耳飾りの少女」も代表的です。

 

ジャック=ルイ・ダヴィッド
1748-1825

他には
ナポレオンを英雄として勇ましく描いた作品
「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」
も有名です。

 

エドガー・ドガ
1834-1917


バレエの踊り子の躍動感ある動きを
的確に捉えた作品を数多く残しています。

 

ピエール=オーギュスト・ルノワール
1841-1919


少女の肖像画を得意としました。

印象派画家ルノワールってどんな人?女性人物画を描いた生涯や作品の特徴を分かりやすく解説

 

フィンセント・ファン・ゴッホ
1853-1890


自己と向き合い沢山の自画像作品を
残しています。

ゴッホってどんな人?印象派や浮世絵から影響を受けたゴッホの人生や代表作を簡単解説します

 

ポール・ゴーギャン
1848-1903


後期印象派としてタヒチの住民を描いた作品
が有名です。

 

まとめ

絵画鑑賞にオススメの作品を
ご紹介してきました。

一見同じモチーフを描いていても
それぞれの時代、それぞれの画家ごとに
対象への向き合い方が違うのが
良く分かります。

絵画鑑賞によって
その時代のリアルな実生活を垣間見たり、
実際にその場に出かけたような
気分になったり、
実際にその人物に会ったような感覚
になったりします。

数百年前に描いた画家たちの視点に
触れられるのは感動モノです。
ぜひ美術館に行って鑑賞してみてください。

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