ルネサンスの巨匠ミケランジェロの生涯と代表作「最後の審判」「瀕死の奴隷」などを簡単解説

こんにちは、画家の落合真由美です。

今回は画家「ミケランジェロ」がテーマです。
ミケランジェロといえば
レオナルド・ダ・ヴィンチ、
ラファエロとともに
ルネサンス芸術の三大巨匠として
有名な画家です。

ミケランジェロは
ローマやフィレンツェを拠点とし
画家としてだけではなく
彫刻家
建築家
詩人
としても活躍した天才芸術家として
知られています。

ミケランジェロの生涯をたどりながら
代表作の見どころを
分かりやすく解説していきます。

ミケランジェロ・ブオナローティ年表

 

 

1475年
イタリア・トスカーナ地方に生まれる

 

1488年
13歳
フィレンツェの工房に入り
彫刻やフレスコ画の勉強を始める

 

1491年頃
16歳
「階段の母子」を制作する

 

1492年
17歳
「十字架のキリスト」を制作する

 

1494年
19歳
フィレンツェの不穏な政治を恐れて
ヴェネツィア、ボローニャへ逃亡する

 

1496年
21歳
ローマへ赴く

 

1500年
25歳
サンピエトロ大聖堂の「ピエタ」を発表する

 

1504年
29歳
フィレンツェで「ダヴィデ」を発表する

 

 

1505年
30歳
教皇ユリウス2世に墓廟制作を依頼される

 

1508年
33歳
システィナ礼拝堂の天井画の制作を始める

 

1512年
37歳
システィナ礼拝堂の天井画が完成する

 

1516年
41歳
新教皇レオ10世からサンロレンツォ聖堂の
ファサード設計を依頼される

 

1536年
61歳
「最後の審判」の制作を始める

 

1541年
66歳
「最後の審判」が完成する

 

1545年
70歳
「ユリウス2世の墓廟」「パウロの回心」が
完成する

 

1546年
72歳
サンピエトロ大聖堂の設計を始める

 

1550年
75歳
「ペテロの磔刑」が完成する

 

1559年
84歳
「ロンダニーニのピエタ」の制作を始める

 

1564年
88歳
ローマで逝去

 

歴代の教皇が偉大なパトロンとなり
ミケランジェロは大きな名誉を得ました。
しかし自分の創作意志とは無関係に
教皇の権力によって制作変更を
余儀なくされることがつきものでした。
しかしミケランジェロはいざ取り掛かると
決して手を抜くことができず
頑固に自らの芸術を追求する人でした。
栄光とは裏腹に
苦悩と葛藤の人生でもあったようです。

 

ラオコーンに触発されたミケランジェロ

紀元前2~紀元前1世紀頃
「ラオコーン」

 

作者は
ハゲサンドロス、
ポリュドロス、
アタノドロス
の三人の彫刻家です。

ミケランジェロは
古代ギリシア、ローマの彫刻に
影響を受けました。

この「ラオコーン」は
ギリシア神話に記述された
古代都市トロイアの神官ラオコーンが
大蛇にかみ殺される瞬間の悶絶
を表現した作品です。

1506年
ミケランジェロはこの「ラオコーン」の発掘
に立ち会ったことから
人間の苦悩や激情、死の瞬間の恍惚
を表現したこの作品に大きく触発されました。

ミケランジェロの絵画作品には
古代彫刻を彷彿とさせるダイナミックな肉体
が表現豊かに描かれています。

ミケランジェロは
「人間は神の姿に似せて創られたものであり、
この世界で真に美しく、
また真実を語るものは裸体である」
と語っています。

 

ミケランジェロ「アダムの創造」

1512年
「アダムの創造」

フレスコ

 

伸ばされた神の右手と
受け止めるアダムの左手。
生命がまさに与えられようとする瞬間の場面
が描かれています。
「神は自分のかたちに人を創造された」
という旧約聖書「創世記」の一節
を表現しています。
神が左腕に抱えている女性は
イヴだという説があります。
初々しいアダムの表情に対して
威厳に溢れる神の像は男性の理想像として
後のミケランジェロの作品に
反映していきます。

 

ミケランジェロ「瀕死の奴隷」

1513~1515年頃
ミケランジェロ30代後半
「瀕死の奴隷」
大理石
高さ228㎝

 

「瀕死の奴隷」は
奴隷をテーマにした
6体連作のうちの一つです。
ミケランジェロはこの作品で
人間とは何かを問いかけています。

人間が死を迎える瞬間の恍惚な表情が
たくましい肉体とともに
表現されているのが分かります。

新プラトン主義の思想
「肉体は魂の牢獄である」とは
肉体が消滅する死によって
魂は解放されて恍惚感を得られ、
天上界にこそ魂の解放がある
というものです。

この作品は
人間に課せられた魂のもがき、
現世にとらわれた生を表現しています。

ミケランジェロは肉体をねじることを
内面の苦悩をを表現する手法としていました。

足元にいる猿は
猿にも等しい愚かな行いからの解放
を意味しています。

この作品はユリウス2世の墓廟のために
作られたものですが未完成で終わっています。

 

ミケランジェロ「最後の審判」

1536~41年
「最後の審判」

フレスコ

 

ヴァティカン宮殿のシスティナ礼拝堂
にある祭壇の壁画として描かれたものです。

制作した当時ミケランジェロは66歳でした。

5年の年月をかけて完成させた
ミケランジェロ晩年の傑作です。

キリスト教では
この世の終わりにはキリストが再び現れ、
すべての死者と生者が集められ、
最後の審判が行われます。
人々は生前の行いによって裁かれ
天国と地獄に送られるとされています。

この教えは人々を導くために重要視され
壁画に表現されました。

聖人やマリア、天使、無数の人間など
400体近くの登場人物の肉体を描き
怒りや悲しみ、戸惑いの感情を
表現しています。

ミケランジェロは実際に死者を解剖し
人体のメカニズムを研究していたため
描く肉体には説得力があり迫力もありました。

ミケランジェロの描いた
この「最後の審判」は
それまでの宗教画と比べると
革新的な作品でした。

どこが革新的だったかというと
従来の宗教画で描かれてきたキリストは
真正面を見つめる静止した佇まい
で表現されていましたが
ミケランジェロは
若々しいキリストを動的な表現で描き
人間らしい怒りに満ちた表情にしました。

また不道徳な裸体の人物が
無秩序に描かれていることが問題となり
壁画の取り壊しが検討されます。

しかし腰布を描き加えたり
芸術家たちの説得によって
取り壊しは免れることができました。
ミケランジェロは宗教画において
革命を起こし後世にも影響を与えたのです。

 

まとめ

ミケランジェロの生涯と代表作について
解説してきました。

ミケランジェロの高い芸術性は
人間の肉体美を追求したこと、
独自の解釈と表現によって
従来の宗教画に革新をもたらしたこと、
美的センスだけではなく
哲学にも精通していたこと
によって生み出されたのではないか
と思います。

ミケランジェロをはじめ
ルネサンス芸術は
聖書の内容が描かれていますので
描かれた当時の教義や宗教観
を知ったうえで鑑賞すると面白いですよね。

ルーブル美術館所蔵「ミロのヴィーナス」が造られたギリシア美術の魅力を簡単解説

画家クールベってどんな人?写実主義運動の先駆者となった生涯や作品の特徴を簡単解説

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です