キュビズムとは何か?分かりやすく簡単解説 | ピカソが「ゲルニカ」に込めた思想とは?

こんにちは、画家の落合真由美です。

絵画には見たままを描くのではなく
画家の思いをのせたり、
変わった視点で描いた作品が沢山あります。
何を描いているのか分からないと
難解に思えて
とっつきにくく感じてしまう方も
いらっしゃるでしょう。

誰もが知る有名画家ピカソ
そのうちの一人です。
「キュビズム」という手法で描いた作品が
有名ですね。
今回はその「キュビズム」の画風について
どんな視点で描かれているのか
分かりやすく解説していきます。

 

キュビズムの特徴とは何か?

キュビズムは20世紀初めに
画家のピカソブラックによって
生み出され美術史に大きな影響を与えた
芸術運動です。

目の前のモチーフを
見たとおりに描くのではなく
画家がどう考えるかを描こうとしました。

キュビズムの画家たちは
いかにシンプルな形でモチーフを描けるか
に挑戦しました。
モノの形を円や三角などの
幾何形態に置き換えて解釈し、
あらゆる角度から見た形をつなげて
再構成しました。
立体感は表現せずに
限られた色や形での表現に
執着しました。

キュビズムのきっかけはセザンヌ

1880年代に画家ポール・セザンヌ
見出した新たな形の捉え方が
のちのキュビズムのきっかけとなります。

セザンヌは
色々な角度から見たモチーフの形を
一つにつなげて解釈しました。
人間の目から見た形そのものではなく
人間の目を介さない真実そのものを
描こうとしました。

セザンヌの作品を見ると
作品に出てくるリンゴは
右側の視点から見たもの、
左側の視点から見たもの、
上からの視点で見たものなどが
一つの画面上にまとまっています。

この手法に影響を受けたのがピカソです。
このあらゆる角度から見た形を
再構成して一つのモチーフを描くという
革新的な手法で
1907年「アヴィニョンの娘たち」
という作品を描きます。
この作品が
こののちキュビズムや抽象絵画を
生んでいくきっかけとなります。

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キュビズム画家ピカソとブラック

ピカソが1907年に描いた
「アヴィニョンの娘たち」
に影響を受けたのが画家ブラックです。
ピカソブラックの二人は
共にキュビズムに夢中になり
似た作品を描いていきました。

 

パブロ・ピカソ(1881-1973)

スペイン南部の港町マラガ生まれ。

 

1900年
パリ北部の繁華街モンマルトルで
多くの画家と関わる中で頭角を示す。

 

1907年
新しい表現の形である
キュビズムや抽象絵画のきっかけ
となるような作風の
「アヴィニョンの娘たち」を描く
友人たちからは大きく非難される。

 

1908年頃
ブラックの描いた風景画を見て
自分の作風と似ていることに驚き
ブラックと共同で
キュビズムの表現を研究する。

 

1911年頃
パリの若手画家たちに影響を与え
「キュビズム」が広まり、
アメリカやヨーロッパに
キュビズムを発展させた芸術運動が
伝染していく。

 

1920年頃
舞台美術や版画、金属彫刻を手掛け
世間では巨匠と呼ばれる。

 

1937年
パリ万国博覧会にて
反戦のメッセージとして
「ゲルニカ」を発表し名声が高まる。

 

ジョルジュ・ブラック(1882-1963)

パリ近郊のアルジャントゥイユ生まれ。

 

1904年
パリでピカソの作品を見て
美術の新しい流れに触れ影響を受ける。

 

1907年
ピカソのアトリエを訪ねた際に
「アヴィニョンの娘たち」を見て
衝撃を受け自分も同じような作品を描く。

 

1908年
南仏プロヴァンスのマルセイユ北西の港町
(レスタック)にて風景画を描く。
風景を幾何学的な形で捉え、
奥行きや広がり、質感を無視して
単純な形と色に置き換えて描いた。
パリの展覧会では落選したが
画商やジャーナリストの目に止まり、
立方体(キューブ)の集合のような画風から
「キュビズム(立体主義)」と呼ばれ、
キュビズムが広まるきっかけとなる。

 

キュビズム作品は画家の視点を見る

キュビズムの特徴が分かったところで
キュビズムの絵画のどこがすごいのかを
解説していきます。
一見すると子供が描いたような
稚拙な絵に見えてしまい
楽しみ方が分からない方もいらっしゃると
思います。

キュビズム作品の見どころは

画家たちの視点です。

画家たちがモチーフの色をどう感じたのか
形がどんな風に見えたのか
それぞれの作品を見ると
感じることができます。

モチーフを見たままに捉えた作品と違って
画家のそれぞれの個性に触れることが
できます。

どの部分をどんな視点で描いたのだろう?
と推測しながら鑑賞すると面白いでしょう。

人間の住む世界ではない別次元から
モノを見ているような神秘的な感覚にも
なります。

 

ピカソの「ゲルニカ」を解説

ピカソの描いた有名なキュビズムの作品に
「ゲルニカ」がありますが
ゲルニカが誕生した経緯を
解説していきます。

 

1936年
ピカソは
スペイン・プラド美術館の名誉館長
となります。
当時スペインは内戦状態にありました。
政府はピカソにパリ万国博覧会に向けて
大作の制作依頼をします。

 

1937年
スペイン北部の町ゲルニカが爆撃されます。
それによってピカソは
「戦争の悲劇」をテーマに
大作を描きます。
巨匠が祖国のために描いたこの作品は
戦争への抗議として
世界中に注目されました。

「ゲルニカ」の作品に描かれているのは
叫ぶ女性、子を抱いて泣く女性、
剣を持って横たわる戦士、槍が刺さった馬、
牡牛などです。
それぞれが不気味な雰囲気を
醸し出していますが何を意味するのか
見る者は想像を搔き立てられ
興味を引き付けられます。

戦争に苦しんだ20世紀の象徴として
この「ゲルニカ」の作品価値は
高まりました。

パリ万博閉幕後「ゲルニカ」は
北欧などを巡回し
一時はニューヨーク近代美術館に
収まりました。
当時のスペインは
独裁的な政治が蔓延る中で
「ゲルニカ」の返還を求めました。

これに対してピカソは
スペインに真の民主主義政治が
確立されなければ
作品の返還は許可しないと主張しました。

 

1981年
「ゲルニカ」は
故郷スペインに無事に返還され、
長い内戦を経たスペインの
民主化と和解が成立したシンボル
となりました。

 

まとめ

今回はピカソやブラックが見出した
「キュビズム」について解説しました。
今回のキュビズムの話で紹介したように
絵の面白いところは
画家の独創性にありますよね。

モノをしっかり観察して本質を掴み、
自分の中で解釈して
色や形を再構築していくプロセス
絵を鑑賞するときも
自分で絵を描くときでも
探求心を掻き立てられ
楽しませてくれます。

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