画家セザンヌを分かりやすく解説【印象派の影響を受けキュビズムの先駆けになった人】

こんにちは、画家の落合真由美です。

今回は画家セザンヌについて
お話していこうと思います。

セザンヌは20世紀以降の美術に
大きな影響を与え今では
「近代絵画の父」と呼ばれています。

現代では幻想や抽象など感情を表現した
作品が数多く生み出されていますが、
ただ見ているように描くだけではなく
強い個性や革新的な見方を絵に求めるのは
セザンヌが晩年認められるようになるまで
はなかなか世間には受け入れられないこと
でした。

セザンヌは19世紀頃まで数百年続いた
見たままを描きだそうとする伝統的な技法
から逸脱して独自の視点や表現を模索し
20世紀美術の先駆者となった人です。

誰もが知る有名画家セザンヌですが
セザンヌって改めてどんな人なのか?
何をした人なのか?
人物や作品の特徴について
分かりやすく解説していきます。

セザンヌってどんな人?

セザンヌ 1877年頃「りんごの皿」

 

ポール・セザンヌ1839-1906

 

1839年
南仏・エクサン・プロヴァンス生まれ。

 

1861年
パリにて絵の勉強を始める。

 

1872-1874
カミーユ・ピサロ(1830-1903)
と共にパリの印象派の影響を受ける。

 

1874年
第一回印象派展に出品するも
批判を浴びる。

 

1877年
第三回印象派展に出品するも
またしても攻撃の的となる。

 

1878年以降
南仏にて自然の本質の探究に明け暮れる。

 

1882-1890
エクサン・プロヴァンスの南西にある
高台から見えるサント・ヴィクトワール山
を数多く描く。

 

1890年
若い世代の画家や評論家からの
関心が高まる。
印象派から脱して
はっきりした輪郭線を描いたり、
作品に感情を反映させて描こうとする
新世代からセザンヌは先駆者として
注目される。

 

1895年
若い美術商がセザンヌの個展を開催し
反響を呼ぶ。

 

1906年
戸外で製作中に嵐に遭い衰弱し急逝する。

 

セザンヌの性格

セザンヌ 1888年頃 「黄色い椅子に座ったセザンヌ夫人」

 

セザンヌは孤高の人と呼ばれました。
当時の芸術の中心パリから離れた
故郷プロヴァンスの風景を何度も描いて
本質を見極めようと挑みました。

取り憑かれたように身の回りにあるモノを
繰り返し描く癖があり、
独自の探求に没頭した画家です。

社交的な性格ではなく
56歳まで世間に知られることなく
孤独に絵と向き合った
プロヴァンスの頑固者として
知られています。

セザンヌは印象派に影響を受けつつも
印象派には物足りなさを感じていました。

持ち前の探求心から
光によって生み出される自然の表情を
客観的に描くだけではなく
もっとモノの本質を掴みたい
と思っていました。

印象派に影響を受けたセザンヌ

セザンヌ 1873年頃「オーヴェル、パノラマビュー」

 

19世紀に写真技術が発達すると画家たちは
写真では表現することのできない
人間の目を通した空気感や雰囲気を
描こうと印象的な絵を描こうとしました。
これが「印象派」と呼ばれる画家たちです。

印象派は細部の丁寧な描き込みは省いて
色や光の印象を表現します。

初期のセザンヌは絵の具を厚く塗って
想像上のイメージを多く描いていましたが
画家カミーユ・ピサロ(1830-1903)から
印象派の理論や技法を学んでからは
画風が変わりました。

それからセザンヌは
印象派の影響を受けつつも
独自の空間表現を
見出していくことになります。

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セザンヌ作品の特徴や作風

セザンヌ 1893年頃「りんごの籠」

 

セザンヌが探求した独自の空間表現とは

「あらゆる角度からモチーフに近づいて
観察する」

というものです。

セザンヌの作品を見ると
セザンヌの目の動きが
そのまま作品に反映されています。

たとえば
画面に登場するあるリンゴは
上から見た視点、
またあるリンゴは右から見た視点、
また別のリンゴは左から見た視点…
というように様々な方向から見た状態が
一つの画面に描かれています。

「現実に見た様子を描く必要はない。
一つの視点からよりも
多数の視点から見た方が
本質に近づける。」
とセザンヌは考えました。

見ている視点がそれぞれ違うので
断片的でまとまりのないモノ同士を
セザンヌは上手くつなげて
一つの絵にしています。

セザンヌの描く世界は
実際にはあり得ない不思議な空間
になっていることが分かります。

セザンヌはルネサンス時代の常識である
「一点の定められた視点から見て描く」
というセオリーを逸脱した
新しい考えにたどり着いたのです。

その後、静物画は
自分の考えや新しい見方を
自由に反映できるものとして
多くの画家が実験的に
新しいことを試み始めました。

キュビズムの先駆けとなったセザンヌ

ピカソ 1937年「ゲルニカ」

 

セザンヌの革新的なモノの見方は
ピカソにも影響を与えました。

セザンヌはあらゆる角度から見た形を
上手くつなげて一つの絵にしましたが
ピカソはその表現に興味を示しつつも
反対論を唱えました。

ピカソはずれた視点のゆがみを
繋げずに描き、
さらに何を描いているのか分からないほど
形を単純化して描いて見せ、
セザンヌの見出した
多角的なアプローチを
さらに進化させたのです。

これがセザンヌが亡くなった
翌年に広まった芸術運動
「キュビズム」です。

キュビズムは
画家ピカソと画家ブラックによって
「モノを幾何的な形に置きかえて
展開図のように広げ、
あらゆる角度から観察した状態を描く」
という考えに落ち着きました。

キュビズムは最終的には
画面に文字や数字が入ってきたり
と20世紀美術の新たな試みがなされ
画家たちに大きな影響を与えたのです。
その美術史の流れを作ったのが
セザンヌだと言えます。

キュビズムとは何か?分かりやすく簡単解説 | ピカソが「ゲルニカ」に込めた思想とは?

まとめ

セザンヌ 1899年頃「入浴者」

 

セザンヌの生涯を紐解きながら
セザンヌが20世紀美術に与えた影響
について解説してきました。

セザンヌの作品って見れば見るほど
不思議な空間ですよね。

どこが上手いんだろう?
なぜ形がゆがんでいるのだろう?
と疑問に思っていた方も
いらっしゃると思います。

セザンヌの絵を鑑賞しながら
不思議な空間に入り込むような感覚に
なってみてください。

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