画家クールベってどんな人?写実主義運動の先駆者となった生涯や作品の特徴を簡単解説

こんにちは、画家の落合真由美です。

画家クールベの作品を
見たことはあるでしょうか?

ダークな背景に浮かび上がる
人物のリアルな存在感。
決して華やかな描写ではないものの
モチーフに対峙する画家の気迫が
感じられます。

クールベの絵は登場する人物や風景が
美化されることなく
現実そのままの姿
リアルに描かれています。

当時の美術界では
美化された理想を描くことが当たり前
のなかこれは
反逆的な行為でした。

現代は自由な表現ができたり
個性が尊重されるのは
当たり前になっていますが
1800年代当時、
伝統から逸れるクールベに対して
厳しい批判がありました。

絵画の古い体制と闘い
自分の意志を貫いた画家クールベは
写実主義運動の中心者で後の
近代美術の先駆者となる存在です。

今回はそんな画家クールベについて
分かりやすく解説していきます。

 

クールベの写実主義に至るまでの美術史

クールベが主体となった
写実主義が生まれるまでは
その時代を反映する様々な美術様式
によって美術史は動いてきました。

写実主義運動を展開していったクールベが
なぜ画壇の強い非難と
闘わなければならなかったのか
その美術史の流れを簡単に追っていきます。

 

1300年頃から始まったルネサンス絵画では
キリスト教教普及のため聖書の内容が
描かれていました。

 

1500年頃から始まったバロック絵画
1700年頃から始まったロココ絵画では
貴族たちが描かれていました。
優美さや官能さ、装飾的なイメージが
テーマになっています。

 

1700年頃から始まった新古典主義では
正確なデッサン力が求められ
写実性の高い作品が数多く誕生しました。

 

1700年後半〜1800年前半ロマン主義では
感情や思想も描かれるようになりました。
デッサン性は維持しながらも
自由な発想で描かれたので
現代絵画の始まりを予感させました。

 

このような時代の流れのなかで
クールベの写実主義の時代に
入っていきます。

これまでの美術のスタンスは
「理想とする美しいものを描く」でしたが
1800年頃にそれらを否定する写実主義運動が
始まり当初は大きな非難を受けます。

 

その写実主義運動の筆頭となったのが
クールベです。

写実主義とは
モチーフを美化せずに現実そのまま描く
絵画様式のことです。

その後
人間の目で見た感覚的な印象を描く
「印象派」
人間の目を介さない
新しい視点で描こうとする
「キュビズム」が生まれたり
新しい表現に展開していくのです。

風景画の名画 | モネ・ルノワール・ゴッホ・ゴーギャン・ルソーから学ぶ描き方や考え方

キュビズムとは何か?分かりやすく簡単解説 | ピカソが「ゲルニカ」に込めた思想とは?

クールベってどんな人?

ジャン・デジレ・ギュスターヴ・クールベ

 

1819年
フランス東部オルナン生まれ。

 

 

1840年
21歳でパリを目指す。
サロンに作品を出しても認められない生活
が10年続く。

 

1846年
27歳、画家として写実的な画風
になっていく。

 

1848年
二月革命勃発。
ルイ・フィリップが退位し
第二共和政が成立する。

 

1849年
美術界に新制度として
出品者たちが
サロンの審査員を選出するしくみ
が導入され「オルナンの食休み」
で入賞を果たす。

 

1851年
「オルナンの埋葬」を発表。
故郷オルナンの葬儀の様子を描く。
田舎を見下していた当時のパリ画壇からは
葬儀の様子を大画面に描く無神経さを
酷評される。

 

1853年
「水浴びする女たち」を発表。
美しい理想の裸体女性ではなく
野暮ったい現実の裸体女性を描くが
これも認められず
画壇への反逆精神が芽生えていく。

 

1855年
万国博覧会に対抗して個展にて
「画家のアトリエ」を発表。
以後、他国での成功を目指し
ヨーロッパ各国を旅する。

 

1869年
50歳、ベルギー国際展で金賞を授与される。

 

1870年
フランスが普仏戦争に敗れ、
ナポレオン3世が失脚。

 

1871年
労働者を中心に「パリ・コミューン」発足。
クールベはコミューンの指導者となるが
逮捕され罰金刑と禁固刑を言い渡される。

 

1873年
クールベはパリを逃れスイスへ亡命する。
スイスで肖像画や風景画を描く。

 

1877年
フランス政府はクールベに賠償金を求めて
作品や財産が競売にかけられる。
失意の中病にかかり生涯を終える。
享年58歳

 

 

このようにクールベは
古い体制を持つ
保守的なパリ画壇と闘い
写実主義画家としての生き方を
貫きました。
時代を先取りする鋭い感性を持ちながらも
波乱の生涯を生きた画家です。

 

クールベ作品の特徴

クールベは当時の世界や社会を
モチーフとした作品を数多く描きました。

生まれ故郷の風景画や農村社会、
野暮ったく不格好な肉体や恥部でも
ためらいなくリアルに描きました。

真実なら醜くても
表現の立派な題材である
というのがクールベの考えです。

クールベはありふれたものの存在の再現
では優れた力を持っていたことが
分かります。

たいていなら絵を描こうとすれば
理想とする美しいものを描きたい
と思うところですが
そこで勝負しないところはやはり
クールベに審美眼や観察力、
高度な描写力があったからこそだと
思います。

 

<クールベ代表作>

「オルナンの埋葬」1849-1850年
「画家のアトリエ」1854-1855年

 

まとめ

美術界の革命家である
クールベの生涯について解説してきました。

モデルをあるがままの姿で描き
伝統的な絵画に挑戦し
批評家の強い非難を浴びながらも
自らの意思を貫き通して生涯を終えました。

のちの近代美術にも影響を与えた
クールベがいかに偉大だったかが
分かります。

クールベの作品は一見すると
暗い雰囲気のものが多いですが
こうしたバックグラウンドを読み解くと
作品が味わい深くなりますね。

油絵とは?水彩・アクリル画との違い|初めてでも簡単に分かる油絵の歴史