印象派画家ルノワールってどんな人?女性人物画を描いた生涯や作品の特徴を分かりやすく解説

こんにちは、画家の落合真由美です。

今回は「画家ルノワール」について
お話していきます。
ルノワールは日本人の好きな印象派画家
としてクロード・モネと並ぶ人気ぶりで
魅力的な女性人物画を数多く残しています。

人生の幸福感を女性人物画に反映させて
女性たちの美しさを魅力的に描いた
ルノワール。

ルノワールの生涯や作品の特徴を解説し
ルノワール作品の鑑賞ポイント
人物画を魅力的に描いていくためのヒント
も引き出していきます。

 

ルノワールってどんな人?

少年時代のルノワールは
腕のいい陶器の絵付け職人でした。
やがて印象派画家となり
パリの風俗画や女性人物画など
生涯で9000点もの作品を描きました。

どの作品も家族、パトロン、友人、有名人
などの幸福な様子を描いていて
ルノワールの人当たりの良さや
絵を描くことを心から愛する職人気質が
伝わってきます。

晩年はひどいリューマチに苦しみ
関節炎で変形した手に筆を縛り付けて
車いすに座り描き続けました。

パトロンや友人に支えられ彩られた
ルノワールの生涯をこのあと
年表で追っていきます。

 

ルノワール年表

 

1841年
フランスのリモージュ生まれ
7人兄弟の6男

 

1854年
13歳
ルノワールの絵の才能に気づいた父親が
磁器絵付け職人に奉公に出す

 

1862年
21歳
シャルル・グレールのアトリエに入門し
モネ、シスレー、バジールと出会う

 

1863年
22歳
パリ郊外のフォンテーヌブローで
モネと制作に打ち込む

 

1865年
24歳
後のモデルとなるリーズ・トレオと出会う

 

1870年
29歳
普仏戦争に参戦する

 

1874年 
33歳
第一回印象派展開催するも
批評家たちからけなされる

 

1876年
35歳
代表作「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」
を制作する

 

1879年
38歳
パリの富裕なブルジョアである
シャルパンティエ家の肖像
「シャルパンティエ夫人と子供たち」
をサロンに出品し名を広める

人を喜ばせたい思いが成功につながり
画商や裕福な実業家たちから
肖像画の依頼が増える

 

1880年
39歳
後の妻アリーヌ・シャリゴと出会う
代表作「舟遊びをする人たちの昼食」
を描き始める

 

1881年
40歳
アルジェリア、イタリア旅行に出る

 

1890年
49歳
アリーヌと結婚する

 

1897年
56歳
事故で右腕を骨折した後遺症で
リューマチになる

 

1900年
59歳
パリ万博に出品する

 

1907年
66歳
南仏コート・ダジュールに移り住み
アトリエを構える

 

1919年
78歳
自宅で逝去

 

ルノワール人物画の特徴

初期ー1860年代

ルノワールの画家人生において初期にあたる
1860年代のルノワールは
印象派として色彩表現に重きを置き
モネたちと共に
「筆触分割」の技法を用いて
風景画の野外制作を行いました。

「筆触分割」とは
瞬間的な光の印象を描写するために
絵の具をパレット上で混ぜずに
チューブから出した絵の具を置くように
描いていく描き方のことです。

しかしルノワールは
徐々に印象派から離脱し始め
独自の作風を確立しようとします。

印象派の画家たちが
「風景を取り巻く自然の瞬間の光を
いかに表現するか」に関心を持っていた中で
ルノワールは人物画にこだわって
女性を魅力的に描くことを
追求し始めました。

都市風俗、郊外の行楽地、女性人物画
を明るい色彩と活き活きしたタッチで描き
印象派として代表的な画家となっていきます。

光に当たった艶のある女性の柔らかい肌。
その質感や透明感を表現しています。

女性の生命の輝きが
ルノワールの生涯の制作テーマなのです。

 

 

1870年代の変化

ルノワールは印象派の技法に
限界を感じていました。

光を捉えようとすればするほど
画面がぼやけ人物の存在感が
薄れていくように感じていたからです。

肖像画の注文を数多く受ける中で
印象派作品の弱点を克服していこうと
しました。

そこで
印象派特有の柔らかいタッチは活かし
人物の輪郭線を明確に描くこと、
印象派が避けていた色である黒を
取り入れることを実践していきました。

そういった作風の転換期の中で完成した作品
がルノワールの代表作でもある
「舟遊びをする人たちの昼食」です。

 

 

1880年代の変化

それまでの柔らかな筆致から
輪郭線や質感の表現が硬くなっていきます。

ルノワールは古典主義的な絵画
を目指し始めたのです。

光を捉える印象派としての描き方は
人物像が背景に埋もれてしまう短所がある
と考えていました。
特に女性のヌードを描くときに
行き詰っていたルノワールは
古典絵画のラファエロの作品に出合い
影響を受けます。

人物が引き立つような構図をとり
輪郭線ははっきりと示すようになります。
風景の中にたたずむ裸婦を描くときは
仕上げは強い日差しに影響されない屋内で
行うようにしました。

ですがそれまでの柔らかい筆致で生み出す
ルノワール作品の魅力が失われてしまい
画商たちから不評を買ったことで
古典回帰の時代は数年間で終わりました。

 

 

1890年代以降

また以前のような画風に戻っていきます。

輪郭線をやさしく残しつつ
明るい色彩で活き活きした作品が
描かれました。

 

ルノワール人物画の魅力

私たち日本人にも大人気の
ルノワール作品ですが
どんな部分が私たちを惹きつけるのか、
ルノワールの画力のすごさや鑑賞ポイントを
解説していきます。

 

✓瞬間の表情や所作を逃すことなく
魅力的に自然に描いている

ルノワールの作品に出てくる人物は
皆がリラックスしていて
表情や所作がとても自然ですよね。
モデルとの信頼関係作りや魅力の引き出しが
上手かったことが窺えます。

ルノワールは特に少女の肖像画を
得意としていました。
少女たちの持つ透明感のあるみずみずしい肌
の質感だけでなく少女たちの瞬間の表情を
逃さずに素早く描くことができました。

絵を描くスピードを上げるには?平均はどのくらい?描くのが遅い方は必見です

 

✓透明感があって柔らかな肌の質感が
見事に再現されている

ルノワールの柔らかいタッチが
女性の柔らかい肌質の表現に
とてもマッチしていますね。

 

✓人々の幸福な日常の瞬間の切り取りが
上手い

ルノワールは第一次大戦などの戦争を背景に
数々の激動の時代を生きる中でも
社会の闇にはまったく目を向けず
「きれいで楽しいものだけを生み出したい」
と幸福な絵を描くマインドを貫きました。

 

✓確かな描写力があり
少ない手数で特徴を捉える力に優れている

ルノワールの作品を近くで見ると
人物に当たる瞬間的な光や人物の動きに
素早く反応して描いた筆跡が
残っているのが分かります。
決して細密に描いているわけではないのに
リアリティーがあるのは
少ない手数で特徴を捉える力に
優れているからですね。

 

✓鮮やかな色彩を使いこなし
映える画面作りに長けている

ルノワールと言えば
野外での人々を描いた作品を
数多く残していますが
彩度の高い色を効果的に使っていて
明るく映える作品になっていますね。

 

✓オートクチュールドレスなど
当時のファッションが
魅力的に描かれている

ルノワールが活躍した19世紀のパリでは
ファッションが誕生し
人々の服装がめまぐるしく
変化していきました。
ブルジョアの女性たちは
オートクチュールの新しいドレスに
次々と着替え、
ルノワールに肖像画として
残してもらったのです。
当時の職人たちが手掛けた
高価で貴重なオートクチュールドレスも
見事に描かれています。

 

まとめ

ルノワールの生涯から
ルノワールが女性人物画に向き合うマインド
や作品の魅力について
解説してきました。

人物画や肖像画を描く場合は
人物のどんな表情を切り取るかによって
作品の雰囲気やテーマが
大きく変わってきますよね。

女性の幸福な表情を切り取り
瞬間の自然な表情を逃さずに捉えた
ルノワール。

ルノワールの作品からは
モデルの気持ちが伝わってくるようです。

魅力的な人物画を描くときにも
ルノワールのモデルに向き合う
マインドはぜひ参考にしたいですね。

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