こんにちは、画家の落合真由美です。
今回は「油絵での魅力的な人物画の描き方」
についてお話ししていきます。
油絵では風景画や静物画、人物画などが
代表的な題材ですが、人物を生き生きと
リアルに描いている作品は迫力があり見応え
がありますよね。
人物画は難しいジャンルの一つですが、
様々なコツを押さえれば初心者でも
描きやすくなります。
今回は初心者が知っておくべき
油絵で描く人物画の基本のポイントを
分かりやすく解説します。
目次
人物の形を単純化する

初心者が人物画で陥りがちなことは
細かく見すぎてしまうこと
(細かく描きすぎてしまうこと)です。
人物は形が複雑なので色々な部分を
細かく見てしまって全体がまとまらずに
難しくなってしまいます。
大事なのは形を単純化して捉えたうえで
全体のバランスを見ながら描き進めること
です。
形を単純化するとはどういうこと
でしょうか?
まずは人間の頭部、胴体、手足をひと塊
として見てみましょう。
頭部は楕円や四角、ベース型などに
置き換えられます。
胴体は長方形や逆三角形に置き換えられます。
頭部と胴体と手足を図形の様に置き換えて
描きます。
この時にパーツ同士の大きさや長さの比率を
よく確かめて全体のバランスを取ることが
大事です。
描き初めの段階でしっかり全体のバランスが
整っていることが必須です。
人物画は正確なデッサンが第一

人物画はやはりデッサンの正確さが第一です。
人物を自然な佇まいで生き生きと見せるには
しっかり観察して正確に形を捉えることが
必要不可欠です。
人物の重心はどこにあるのか最初に
把握しましょう。
重心線を描いておくと意識できます。
重心を把握した上での足の位置、
座っているお尻の接地点などを決め、
頭から足の先まで一つの重心線によって
繋がっている状態を描きます。
この人物の全体像の把握がとても大事です。
描き進める時は各パーツを部分的に
描きがちで一つの身体として繋がっている
という事実を忘れてしまいます。
全体感を意識していないとおかしな骨格や
不自然なポーズになり
人間としての自然な佇まいが
損なわれてしまいますので
常に気をつけましょう。
最初に形をしっかり合わせておかないと
せっかく描き進めていっても
実際のモデルさんと全く違う印象に
なってしまったり、大幅な修正が
必要になったりして
描きづらくなってしまいます。
油絵の具は扱うにもコツがいるので
最初に正確な輪郭線や形がしっかり
定まっていることが大前提です。
正確な形を掴むのが難しい場合は
カーボン紙で写真に映る人物の輪郭を
転写したり、写真とキャンバスに
同じ比率のグリッド
を引いて転写しても
良いでしょう。
形が正確に捉えられていたら
油絵の具の扱いに集中することができます。
人物画を描くための準備

油絵は事前に簡単な画面計画を立ててから
描き始めます。
描きたい人物像の明暗計画と色彩計画の
両方を大まかに立てておきます。
明暗計画とは
人物像を白黒に置き換えて見た時に
光が当たる明るい部分と光が当たらない
暗い部分を的確に把握して、
描き終える時まで明暗の秩序を保てるように
することです。
色彩計画とは
理想の完成状態を色彩でイメージすること
です。何色主体の画面なのか、
色数は何色くらいか、彩度(色の鮮やかさ)は
どのくらいかなどを考えます。
パレットに絵の具を出して混色をし、
イメージした色を作りましょう。
油絵での人物画の描き方

油絵の描き始めは大きな色面を作ります。
人物、人物が着用している服、背景
といった感じで大きな面で色を塗り分けます。
このように色面構成をシンプルにすることで、
完成した時に主題がしっかり伝わる作品
になります。
顔は明るく健康的に見えるように
描いていきます。
顔のどの部位に光が当たっているかを
観察しましょう。
明るい部分に暖色系の色を使い、
陰影部分には寒色系の色を使います。
陰影色に背景の色を少し加えると
空間や人物像によりリアリティが出ます。
顔のシワは控えめに捉えるつもりで描くと
自然な印象になります。
皮膚の柔らかさやハリも意識して
描きましょう。
油絵の具は乾燥まで時間がかかるのが
特徴です。
しっかり乾燥させて絵の具が濁らないように
しましょう。
人物の肌を描く際に絵の具が濁ってしまうと
肌の色がくすんでしまいます。
人物画は人物の生き生きとした肌の色も
大事になってくるので意識しましょう。
背景は人物が引き立つようにシンプルに
まとめるのがポイントです。
背景は人物の肌や服の色と対照的な色
を使うと人物が引き立つでしょう。
人物画は客観的に見直すこと

人物の佇まいは自然さが大事です。
人物の自然な佇まいを表現するには
客観的に見て全体のバランスを取ることが
大事です。
客観的に見る方法はいくつかあります。
離れた位置から画面を見る
30分描く毎に画面を離れて見てみましょう。
離れて見ることで画面全体が視界に入るので
形や明暗において不自然な部分を
見つけやすくなります。
このように人物画は全体像を掴みながら
描くことがとても重要です。
しかしこの様な見方は一朝一夕で
できるようになるわけではありません。
全体像を素早く掴む訓練には
クロッキーが最適です。
クロッキーとは人物の特徴を素早く掴んで
10分から15分程度で描き上げるラフな
スケッチのことですが普段から
クロッキーする習慣があると
人物画上達の近道になります。
画面を写真に撮る
画面を写真に撮って見てみましょう。
不自然な箇所、手を入れるべき箇所が
明確に分かります。
撮った画面の写真を白黒写真に置き換えると
明暗の捉え方のチェックにもなります。
油絵の具の色に惑わされて明暗をしっかり
描き分けられていないことはよくあること
です。
形を正確に描くこと、
明暗をしっかり捉えること、
魅力的な色使いをすることは
それぞれ別の視点でチェックしていく必要
があります。
写真に撮ったり、白黒に置き換えたりして
視点を変えることで
形の捉え方が不正確なのか、
明暗の描き分けにリアリティがないのか、
色の組み合わせに課題があるのか、
それぞれの問題が見えやすくなります。
画面を逆さまにしてみる
モチーフである人物の写真、
撮った画面写真、描いた作品を
逆さまにして見ることで客観的な視点を
取り戻すことができます。
人間の目は普段見慣れているものほど
先入観が働いて自分が見たいように
見がちです。
私たちは「人物の顔、身体の形は
こうなっているはずだ」と思い込みで
形を描いてしまうところがあります。
人間の身体の形は私たちの想像以上に複雑で
意外な形をしているものです。
逆さまにすることで先入観を取り払って
純粋に形の起伏を観察することができます。
長時間描き続けていたり、
描いていて煮詰まったときは
画面や写真を逆さまにしてみましょう。
新たな目で観察に集中できるはずです。
まとめ

油絵での人物画の描き方について
解説してきました。
ポイントをまとめるとこうなります。
①形を単純化して捉える
②重心線を補助線として全体像を把握
③最初に正確に形を決めておく
④明暗計画を立てる
⑤色彩計画を立てる
⑥明るく健康的な肌の色を意識する
⑦絵の具が濁らない様よく乾燥させる
⑧客観的な視点で何度も見直す
以上のコツを押さえながら
生き生きと魅力的な人物画制作を
楽しんでください。
















