こんにちは、画家の落合真由美です。
今回は石膏デッサンについて
お話ししていきます。
石膏デッサンは
デッサンの基礎が凝縮されていて
デッサン力アップに大変好都合です。
ただデッサンの中でも
特殊で難しいイメージを持っている方が多く
攻略ポイントをしっかり押さえておかないと
大変苦労します。
無駄な苦労をしないためにも
どんなポイントに気を付けて
描いていけばよいのか
詳しく解説していきます。
構図のセオリー
石膏デッサンの構図には
ある程度セオリーがあります。
背景の余白を多く取りすぎると
形態の迫力が出ずに
弱い印象のデッサンになってしまいます。
だいたい石膏像の端が5mmから1cmくらい
切れるような入れ方をします。
また胸像の台座は基本的には入れずに
描きます。
自己流の構図はとらずに
この基本にのっとって描いていくことで
安定したデッサンになっていきます。
像の動きの特徴を把握する
石膏像のオリジナル像は
歴史上の肖像彫刻であり、
製作した彫刻家たちは全身または上半身の
動きを美的に造形して像を仕上げています。
どんな動作をしているのか、
顔の向きはどうか、
身体の重心はどこにあるかなど
像の動きの特徴をしっかり踏まえたうえで
描き始めることが大切です。
石膏像はオリジナル像の一部分を切り取って
造られていることもあるので
オリジナルの全身像は
どんな動作をしているのか
調べてみるのも良いでしょう。
形をしっかり測る
石膏デッサンは形態の正確な描写が第一です。
数ミリ狂うと全く違う印象に
なってしまいます。
描き進めながら形を決めていくのではなく
最初にしっかり形を測って形が決まってから
描写していくことが必要です。
デスケルや測り棒を使って
比率の確認をしっかり行い、
正確にアタリをとることが大切です。
形態を面で捉える意識
石膏像の形態を描き起こしていく際に
重要なことは形態を面で捉える意識を持ち、
稜線(面と面の境界線)を
積極的に見出して
像に量感を持たせることです。
特に裸体の像は意識的に面を見つけないと
形がのっぺりしがちで立体感が出ません。
それぞれの石膏像で大きな動きのポイントや
形が大きく切り替わるポイントがあります。
像の動きは言うまでもなく
頭部、首、胴体、腕、脚と
すべてつながっていて連動しています。
こうした全体感を把握した見方で
石膏像全体を球体や立方体などの
幾何形体に置き換える様に形を単純化して
観察することが大切です。
こうすることで自然と面で捉えられたり、
稜線を見つけやすくなります。
形の回り込みと反射光
石膏像という白い立体だからこそ
観察しやすく丁寧に見なければならない部分
があります。
それは
形のまわりこみ
と
反射光
です。
形の起伏を追っていくと
左右、上下あらゆる方向に回り込みながら
複雑な形を形成しています。
石膏像を単純な一本の輪郭線で
描いてはいけません。
手前から奥、奥から手前、
いろいろな方向から回り込んできた
シルエットの集合体が
像として存在しています。
回り込んでいるという意識を持つことで
単純な一本の輪郭線だけで終わらない
複雑な形を表現することができます。
反射光は周りのモノにあたった光が
反射して照り返すことによって起きます。
白い石膏像は陰影と共に
この反射光も観察しやすくなっています。
陰(かげ)は光が当たらない部分、
影(かげ)は床面などに映し出される部分
ですが、日向、陰、影、反射光の四種類の
トーンを描き分けることが
石膏像を立体的に表現する足掛かり
となります。
石膏像の顔の描き方
石膏像の顔の部分を
集中して描いていくときに
髪の毛、目鼻口などをパーツ別に
それぞれ分けて描いてしまうと
浮いたような不自然な印象になったり、
いくら細かく描き込んでも似てこないという
現象が起きます。
頭部から顔全体を一つの凹凸のある大きな塊
として見て描くことが大切です。
対象に似せようと思うと
パーツの輪郭だけを見がちですが、
そうすると立体感が出ないばかりか
結果的に違う印象の顔になっていきます。
パーツの輪郭の周りの形の起伏を見ることが
大切ですし、パーツを細かく見るのではなく
パーツ同士の関係性を
徹底的に比較していくことで
石膏デッサンは上手くいきます。
石膏の質感
石膏像の石膏の質感をよく観察すると
光の当たっているところと
当たっていないところとで
だいぶ質感が違うのが見て取れます。
日向、影、陰、反射光この四つのエリアで
それぞれ質感が違いますね。
日向のエリアはバサっと温かみのある質感、
影のエリアは日向の部分ほど
ザラっとした石膏の質感は見えませんが
サラサラとした黒い影の
セミマットな質感が見えます。
陰のエリアは目が詰まったような
冷たいマットな質感に見えます。
反射光のエリアはマットな冷たい質感の中に
かすかな光が見え
ヌメッとした質感に見えます。
エリアによって違う質感を描き分ける時は
使う画材の硬さを変えます。
また日向部分は画用紙の目を活かして
画材を軽く載せる感じで描き、
陰影部分や反射光部分は
擦って画用紙の目をつぶして
マットな質感にしたりします。
このような質感の描き分けも
像のリアリティーにつながっていきます。
石膏像の白さの表現
石膏像は白い色をしています。
白い像の見た目の陰影を描いたり、
触覚的なアプローチによって
見えない形の起伏を強調して
描いたりしますね。
しかし描いていくうちにブロンズ像のような
黒っぽい印象になってしまっては台無しです。
たくさん手数を加えたとしても白い像として
見せなければいけません。
描き込みつつ白い像に見せるには
どうしたらいいのでしょうか?
ポイントは白から黒までの色調の間(中間色)
の色幅が肝心です。
像の中には石膏の色そのものを表す
真っ白な部分が存在します。
光源に一番近いところです。
その部分をキレイに見せられているか
によって石膏像は白く見えます。
色の見え方は相対的なものです。
相対する片方が暗ければもう片方は
明るく見えます。
自然な石膏の白に見せるためには
白と隣り合うエリアには
微かなグレーが存在し強い黒まで
緩やかな色調で繋がっています。
そのグレーから黒までの色調を
豊かに表現していくことで
立体感のある白い石膏像として
見せることができます。
まとめ
石膏デッサンは
石膏像の複雑な形態に惑わされて
細かく見すぎてしまうと全体感が狂い、
よりデッサンを難しくしてしまいます。
しまいには顔が似ない、
形がいつまでも決まらない、
描き込めないという負のスパイラルに
陥ってしまうことがあります。
石膏デッサンのポイントは
構図と形を完璧に決めてから
描写し始めること、
形の起伏を面で捉えて造形していくこと、
各パーツが像全体の中で
どのくらいの大きさで
どのような配置になっているのか
ひたすら関係性を比べていくこと、
日向・陰・影・反射光の色調を
キレイに描き分けることです。
以上のことを実直に行い
あとはひたすら枚数を積み重ねて
練習することですね。