りんごの上手な描き方とは? りんごからデッサンの基礎がすべて学べます

こんにちは。画家の落合真由美です。

みなさんは絵のモチーフを決める時は
どうしていますか?
絵を始めたてのとき、
デッサンの基礎を学びたいとき、
デッサン力を鍛えたいとき、
描くモチーフ選びに迷ったとき、
描きごたえのある作品にしたいとき、
そんなときは是非モチーフにりんごを
取り入れてみてください。

今回はそのりんごからデッサンの基礎
を学んでいこうというお話です。
なぜ、りんごなのかというと
りんごには
デッサンで学ぶべき重要なポイント
が凝縮されているからです。
りんごが描けるようになると何でも描ける
と言われているほど、りんごのデッサンは
とても勉強になります。
私も学生時代はりんごをたくさん描いて
デッサン力を鍛えました。

では、
りんごから学べるデッサンの基礎のすべて
をやさしく解説していきます!

りんごが描ければ、どんな果物でも描ける

りんごは一見球体のような形ですが
その構造を観察するともっと複雑な形
をしています。
りんごを輪切りにして上から見ると
5角形
になっています。
しかも種の入っている部分も
5角形
になっています。
5角形の形の変わり目を見つけましょう。
面で捉えることで立体的に描くことができます。
面が切り替わると光の当たり方が変わるので
りんごの色や質感、影の入り方がそれぞれ
違って見えるはずです。
それを意識して描き分けてみましょう。

一見球体の構造の果物でも面体として捉える
見方は果物をはじめとするあらゆる自然物の
描写に実践できます。

りんごが描ければ工業製品や人物も描ける

りんごはよく見ると左右非対称の複雑な形です。
なので面の変化を注意深く観察しないと
いけません。

反対に工業製品は左右対称の
規則的な形をしていて面の変化が分かりやすい
モチーフです。

りんごで観察力を磨けば
工業製品も楽に描ける様になります。
又、面で捉える手法は人物画にも応用できます。
りんごでモノの見方を鍛えることで
あらゆるモノが上手く描ける様になります。

では、りんごを描くときに見るべきポイントを
具体的に解説していきます。
りんごに当たる光や反射光が観察しやすい様に
りんごの下に大きな白い布や紙を敷く
いいですよ。

りんごを上手く描くキーワードは「5角形」

5角形の形がハッキリ出ている「肩」の部分を
強調して描きましょう。
5角形の面で捉えられたら、それぞれの面の
光の当たり方の違いを見てみましょう。

光が当たる明るい部分
形が切り替わる所(稜線)
暗い影の部分
反射光が当たる部分

この4つを描き分ける事でりんごの形を
立体的に表現できます。あらゆる立体物は
明部、暗部、稜線、反射光
で成り立っているからです。

面で捉える→面で光の描き分けをする
この手法はあらゆる立体物を描く時に
応用できますので是非やってみてください。

上手いりんごの絵には「遠近感」がある

次はりんごの手前と奥を描き分けて
遠近感を出す手法です。
まずはりんごを描く位置から直角になる位置に
立ち、側面のシルエットを見てみましょう。
りんごの肩の部分は手前に出っ張っていますが、
お尻の部分は奥に引っ込んでいることが
分かります。

正面から見ただけでは
気づきませんが側面から観察することで
思ったより形に凹凸があることに
気づかされます。

出っ張っている部分は
強く濃くクリアに「この部分は出ているぞ」
と念じながら描く、引っ込んでいる部分は
弱くマットな質感で「ここは引っ込んでいるぞ」
と念じながら描くという風に意識を
切り替えるといいですね。

また、りんごの側面は正面から見ると
ほんの少しの面積なので分かりにくいですが、
正面から見た幅と同じくらいの幅が
凝縮されていることを忘れないでください。

すると手前と奥の描きわけの意識が芽生え、
りんごの立体感や奥行きを上手に
表現できるようになります。

この手法は球体や円筒形のものを
描く場合にも応用できますね。

リアルなりんごの絵にはリアルな影がある

存在感あふれるリアルな絵に必要不可欠なもの、
それはリアルな影です。
モノがどんな佇まいでどう置かれているのかは
影が語ってくれる
と言っても過言ではありません。
では影をリアルに描くには
どうしたら良いのでしょう?

その答えは設置面をよ〜く観察することです。
りんごの構造が「5角形である」という話は
先ほどしましたね。
ということはつまり設置面も「5角形である」
ということです。

正面からは見えませんが
後ろ側の設置面も仮の線で描き足してから
影を描いていくと、りんごのリアルな存在感が
出てきます。

設置面と影を丁寧に描くことで
モチーフの重い・軽い、質感の厚い・薄いまで
伝わる様になりますよ。

影をリアルに描くコツ

影のつき方には法則があるのでそのコツを
押さえるだけで影をリアルに描くことができます。

影をリアルに描くコツを3つお教えします。

①光の方向を把握する
たとえば左から光を当てれば勿論右に影が
落ちますよね。
光がどこから当たってどこに影が
落ちるのかを明確に決めることが大事です。
光が色々な方向から当たる場合は
光の方向を一つに絞りましょう
そうすることで明部と暗部の描き分けが
容易になるほか、見た人にも光の演出が
ドラマチックで伝わりやすいものになります。

②ムラに気を付け影のグラデーションをつける
影は接地面に近いほど強く、遠いほど弱く、
手前ほど強く、奥に行くほど弱く
の法則でグラデーションをつけましょう。
ムラなくきれいに塗るコツは
均一な力で鉛筆を動かすことです。
影はマットな質感なので
鉛筆の場合はティッシュで、木炭の場合は
ガーゼでこすってぼかすことでムラなく
繊細なグラデーションを作ることができます。

③影の形はモチーフの形を物語る
影の形を忠実に描くことでモチーフの形や
存在感がリアルに伝わります。
なんとなくグラデーションでぼかすのではなく
りんごの形を正確にとらえるのと同じように
影の形も集中して観察しましょう。
りんごは5角形の形をしており、肩の部分が
出っ張っているという話をしましたが
肩の出っ張りに沿って影が落ちているのです。
りんご固有の形を反映した影の形になっている
のです。

また、りんごのヘタの影がりんごの実の部分に
落ちているのが観察できます。ヘタの影は
りんごの実に沿って湾曲したような影
なっているはずです。そこもリアルに
再現できるといいですね。

りんごらしさは形のふくらみで表現する

りんごのヘタの周りに穴がありますよね。
この穴はへこんでできたのではなく、内側から
ふくらんでできたのです。
そのふくらみをなぞる様に線を重ねましょう。
線を重ねることで形の出っ張りが形成
されていくものです。ふくらんで
出っ張っている部分こそ沢山手数を加える
ことで形が描き起こされていきます

また、りんごはとてもいびつな形をしています。
シルエットをなぞると単純に上から下に
規則正しく変化しているのではなく左、右、
あらゆる方向に回り込みながらシルエットを
形成しています。シルエットを単純な一本の
輪郭線で描かないようにしましょう。

手前から奥、奥から手前、いろいろな方向から
回り込んできたシルエットの線の集合体が
りんごの形になっているのです。

これはりんごだけではなく立体物すべてに
応用できます。「回り込んでいる」という
意識を持つことで単純な一本の輪郭線だけで
終わらない複雑な形の表現が叶うのです。

りんごの質感を出すコツ

質感を簡単に出す方法はずばりハイライト
のつけ方にあります。
ガラス製品など元々透明感や光沢がある
モチーフほどハイライトがくっきり強め
入ります。逆に布製品など光沢がない
マットな質感のモチーフにはうっすら控えめな
ハイライトが入ります。

りんごはセミマットな質感をしているため
控えめなハイライトが入ります。ある程度
描いた後に軽く練りゴムで抑える程度に
白抜きしてハイライトをつけると自然です。

そしてハイライト以外の部分で質感の違いを
表現するには画材の使い方に変化をつける
ことです。たとえば・・・

<光が当たる部分や手前の部分>
柔らかいB系の鉛筆を使う
鉛筆を立てて鮮やかに描く
紙の目を残してざらっとした質感で描く
こすらない

<光が当たらない部分や反射光がある部分>
硬いH系の鉛筆を使う
鉛筆を寝かせて描き、筆跡を残さない
紙の目をつぶすように描きマットな質感にする
こする

【更にりんごのリアリティーが増すポイント】
りんごのヘタに注目してヘタと実の質感の
違いを描き分けてみましょう。
ヘタは乾いた木の質感で、ヘタの先端は
枝についていた時の名残で少し膨らんでいます。
そしてヘタの中央は乾いて少しくぼんでいます。
実の部分はつるっとしたりぬめっとしたり
ヘタとは真逆の質感をしていますね。

りんご表面の模様を上手く描くには

りんごの表面には斑点状の模様がありますが
それだけ描こうとすると模様だけ浮いて
しまって上手くいかないことがあります。

大事なのはりんごの形に沿って模様の見え方も
変化するということです。
りんごは内側からふくらんで大きくなるため
出っ張っている肩の部分には力が密集して
側面にいくにつれて力が分散し、お尻に近づくと
再び力が密集します。

斑点の模様も中央に行くほど大きくなって
上と下に行くほど徐々に小さくなって消えて
いきます

自然物のほとんどすべてにこのような力の密集
と分散があり、それに従って表面の模様や質感
に変化が見られます。ここを理解していると
表面の質感表現が浮かずに自然に見えて
来るのです。

この手法は工業製品にも応用できるでしょう。
表面に文字や柄がプリントされていても
製品自体の構造を理解してそれに沿って
表面の表情を描いていけばOKです。

まとめ

あらゆる視点でりんごの描き方を解説
してきましたがいかがでしたか?
一見シンプルな形をしたりんごですが
奥深いですよね。りんごにはこれだけ
勉強になる要素が詰まっています。
徹底して観察し、観察した情報を頭の中で
整理して再構築することでデッサン力を
鍛えていきましょう。
りんごをマスターすればデッサン力は
かなりレベルアップしていますよ。
では、また。

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