抽象画の描き方や鑑賞する時の楽しみ方|カンディンスキーやモンドリアンの代表作も解説

こんにちは、画家の落合真由美です。
今回は「抽象画」をテーマに
お話ししていきます。

抽象画というと何を描いているのか
分かりづらかったり、
自分で描く場合もどう描いたらいいのか
考えすぎてしまったり難しく考えがちです。

そこで抽象画の鑑賞を楽しむ時のポイント
抽象画を楽しく描くためのコツ
初心者の方にも分かりやすく
解説していきます。

抽象画とは?

抽象画とは
具体的なモノを描くのではなく
目に見えないものや言葉にできないことなど
画家の主観的な感情や考えを表現する絵
のジャンルです。

具象画は人物画や風景画など
具体的に何かを描いている絵のことなので
分かりやすいかと思いますが、
それに対して抽象画は
画家がどんな感情や考えで描いているのか
タイトルや作品の雰囲気から読み取ったり
想像したりすることになります。

なかには作品自体に意図がなく
ただ色や形の構成の美しさだけを追求したり、
偶然きれいにできた絵の具のシミを
作品化することもあります。

そのため抽象画の解釈の仕方は
見る人によって違ってくるものです。
意図を想像したり
単純に見た目の美しさを楽しんだり
してみましょう。

 

目に見えないものの表現でいうとたとえば
人が目・耳・舌・鼻・皮膚を通して
感じることのできる
5つの感覚(五感)である
視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚
の視覚を除いた4つの感覚
抽象画のテーマになります。

【聴覚】
音楽、雑音、自然界の雨、風、波の音、
人間や動物の声など

【味覚】
甘い、辛い、酸っぱい、苦い、しょっぱい、
美味しい、不味いなど

体験した良い匂いや心地よい肌触りも
表現の材料になりますね。

 

また、言葉にできないことといえば
人間の言いようのない複雑な感情
当てはまると思います。
言葉で伝えようとすると
たくさんの言い回しで表現しなければ
ならないところを絵で表現すれば
何となくそのニュアンスが
見る人に伝わったりします。
使われている色や筆の運び方、
描かれている線や面の強弱などに
感情が反映しているからです。

たとえば黄色や赤なら喜びや楽しさ、
黒は怒り、寒色系は哀しみを連想させます。

 

このように抽象画は
モノの見た目を描かない分
モノや体験に潜んでいる本質を見ようとする
試みなのだと思います。

 

抽象画の歴史と代表作

抽象画が生まれた時代背景を
解説していきます。

18世紀までは
宗教画や肖像画を写実的に描く芸術スタイル
が主流でした。

19世紀に入ると
写真技術が発達したことにより
人間が見ている世界を感覚的に描き出す
印象派が生まれました。

印象派に影響されつつも
独自の絵画論を展開したのがセザンヌです。

セザンヌは人間の目を介さない
ありのままの世界を描こうとし、
あらゆる視点から描いたパーツを
上手くつなぎ合わせて一つの絵にしました。

セザンヌの絵はよく見ると
空間やモノが歪んでいるように見えます。

画家セザンヌを分かりやすく解説【印象派の影響を受けキュビズムの先駆けになった人】

 

そのセザンヌの視点に影響されつつも
別の絵画論を唱えたのがピカソです。

ピカソは多角的な視点からとらえたパーツを
繋げずに歪んだまま一つの絵にしました。
これが「キュビズム」であり
抽象絵画が生まれる土壌
ここで造られました。

キュビズムとは何か?分かりやすく簡単解説 | ピカソが「ゲルニカ」に込めた思想とは?

 

その後の抽象絵画の歴史で
代表的な流れを辿るとこうなります。

 

1910年頃 純粋抽象絵画・カンディンスキー

代表的な画家はカンディンスキーです。

純粋抽象絵画は
自己の感情や世界観を作品に反映していく
手法の抽象絵画です。

カンディンスキーは
印象派のモネの「積み藁」から
大きく影響を受けました。
写実的な描き方から逸脱した印象派の作品は
カンディンスキーにとって
衝撃的な出会いでした。

「積み藁」を見た当時
何が描かれているのか分からなかったにも
関わらず大きな感動を覚えた
カンディンスキーは
具象的な要素を排除した「抽象表現」
の可能性を見出します。

クラシック音楽好きなカンディンスキーは
音楽を色として捉え
リズムを形にした表現を生み出しました。

カンディンスキーは
「絵画は具象的な主題がなくても
色と形の構成で人を感動させることが
できる」と気づき
抽象絵画というジャンルを
切り拓いた画家です。

 

1920年頃 新造形主義・モンドリアン

代表的な画家はモンドリアンです。

直線・水平・垂直・直角の線と面で
構成する絵画様式を取り
幾何学的な表現が特徴です。
使用する色は三原色とモノトーンのみで
秩序と均衡のある構成
になっています。

モンドリアンの作風はキュビズムの作品から
強い影響を受けたことがきっかけでした。

キュビズムを幾何学的な形で抽象化し
新しい美術理論を展開しようとします。
極限まで形を幾何学化・単純化すること
目指したのです。
線や色がバランスよく構成されること
によって形を単純化しているのにも関わらず
画面に造形を感じさせる作品になっています。

 

1950年頃 抽象表現主義・ポロック

抽象表現主義とは

巨大なキャンバスに意図なく
絵の具を載せていく表現

が特徴です。

 

抽象表現主義の代表的な画家は

ジャクソン・ポロック

マーク・ロスコ

です。

 

 

ジャクソン・ポロック

精神科医であり心理学者の
カール・ユングに影響を受け、
無意識が生み出す芸術の意味を
考えていました。

またピカソが描いた「ゲルニカ」に
大きな衝撃を受けていました。
ピカソを超えるような新しい技法を
生み出そうと葛藤する中で、
描いているモチーフではなく
創作過程に意味を見出す
アクションペインティングという技法
生み出しました。

アクションペインティングとは
創作過程のアクションによって
絵を作っていく様式です。
巨大なキャンバスに対して自分が動きながら
絵の具をキャンバスに直接滴らせたり、
飛び散らせたりして創作するのが特徴です。

 

 

マーク・ロスコ
カラーフィールドペインティングという
色彩の面で絵を作る手法で描いています。

全面または分割した面を
鮮やかな色で塗りつぶす様式です。

ロスコは作品に対峙した人がどう感じ取るかに
こだわって色の構成比率を割り出して
作品に反映させました。

ロスコは人間の精神の不確定さを
作品で示そうとした画家です。
ロスコの作品は見た人に
自分自身の精神と向き合う機会
を与えてくれます。

 

このように抽象画と言っても
様々なスタイルや考え方が存在します。

 

抽象画鑑賞の楽しみ方

見る人によって
さまざまな解釈ができる抽象画ですが
具体的にどこを見たら良いのか
どうやったらより楽しめるのか
簡単に解説していきます。

 

まずは見た目の色や構成の美しさ
を楽しむのがおすすめです。

色の配色がきれいだなあとか
形の構成のバランスがかっこいいなあとか
純粋に見た目の美しさを楽しむ鑑賞方法です。

美術館で間近に作品を鑑賞するときは
絵の具のかすれや凹凸、質感など
絵の具の表情を感じ取ることができます。
画家の筆跡が分かったり、
筆を運ぶ時の緊張感が想像できたり、
筆圧の強弱で意図が垣間見えたりします。

制作意図や作者の感情を想像してみる
のも楽しいですね。
見た目やタイトル、画家のプロフィールなど
から推測してみましょう。

無心で作品の色と形に触れるだけでも
非日常を味わうことができます。
ただ作品の目の前に立ち
その空間にいるだけで
言葉にならない癒しになるものです。
描いた当時の画家の感情や意図も
不思議と鑑賞者に伝染してきて
共鳴できたりするものです。

 

抽象画の描き方や描くためのアイデア

抽象画は誰にでも描きやすいです。
具体的に何かのものを描くわけではないので
自分の感情の赴くままに
自由に描くことができます。

デッサン力や絵の知識がなくても大丈夫です。
無心になって楽しんで描いてみましょう。

色々ある描き方の中でも
おすすめの描き方を何パターンか
ご紹介します。

 

アイデアを描く前に決めておく

使う色や配置など全体の構成を
あらかじめ考えてから描くと
キャッチーな作品に仕上がります。
なるべく少ない手数で描きすぎないように
シンプルに仕上げると
緊張感のある作品になります。

 

 

 

目に見えないものをテーマにして描いてみる

自分の感情や身の回りの音、
体験した味や匂い、肌触りなどを
テーマにすると面白い作品になります。

 

 

制作過程のアクションを楽しむ

アクションペインティングは
偶然できた絵の具のきれいな形やニュアンス
がそのまま作品になります。
キャンバスや画用紙を床に置いて
絵の具を自由に飛び散らせたり
垂らしたりしてみましょう。
意図的に描いたらできないような
絵の具のにじみや複雑で繊細な絵の具の動き
を作ることができます。
棒などを使っても面白いです。

 

 

モチーフを単純化して描いてみる

モノの形や色をそのまま描くのではなく
元の形状が分からないくらい
単純化した形に変えて描いてみましょう。
撮った写真を見て自分の感じるままに
アレンジしてみると面白いです。

 

まとめ

抽象画の鑑賞ポイントや描き方について
解説してきました。

抽象表現とは自分の内面と
じっくり向き合うことであり
日常ではなかなか体験できない
特別な行為だと思います。

自分らしく感性を研ぎ澄ませて
自由に楽しんでみてください。

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