木炭デッサンと鉛筆デッサンの違い | それぞれの描き方のお悩みにお応えします

こんにちは、画家の落合真由美です。
デッサンといえば
何を思い浮かべるでしょうか?
木炭デッサン?
鉛筆デッサン?

デッサンする時は
大抵この二つのうちのどちらか
だと思います。
同じデッサンでも
木炭か鉛筆か素材が違うだけで
進め方も目的もまるっきり違ってきます。

私は美術予備校時代に
木炭も鉛筆も両方経験しましたが、
どちらも扱い方や描き方のコツがあって
それぞれマインドを切り替える必要が
ありました。

特にデッサン初心者の方は
「どう違うのか、
どちらを選べば良いのか」
モヤッとしたり
それぞれの扱いの違いに戸惑ったり
したことがあるかと思います。

今回は
木炭デッサンと鉛筆デッサンの違い
について
クリアにしていきながら
それぞれのお悩みについても
解決していきます。

木炭デッサンと鉛筆デッサンで使う道具

木炭と鉛筆では
まず使う道具が全く違います。

それぞれ必要な道具や使い方について
解説していますのでご覧ください。

 

木炭デッサンに必要な道具については
こちら↓

木炭デッサンに必要な道具や進め方 | 初心者でも扱いやすくなるコツ

 

 

鉛筆デッサンに必要な道具については
こちら↓

【初めての鉛筆画】必要な道具や鉛筆の上手な使い方を初心者でも分かりやすく解説します

 

道具が揃ったところで
木炭と鉛筆の違い
大きく3つに分けてみます。

①扱い方
②進め方
③仕上がりの雰囲気

それぞれどういうことなのか
このあと詳しく解説していきます。

 

木炭と鉛筆の違い①扱い方

 

まず木炭と鉛筆には
それぞれ特性があります。
初心者はここを理解しないまま
木炭も鉛筆も
同じマインドで扱いがちです。
この特性をちょっとでも分かっていると
スムーズです。

 

【木炭の扱い方】

木炭デッサンは
木炭紙に木炭をなじませて描いていきます。
木炭紙に木炭をひと撫でしただけだと
粉っぽい感じで
浮いたような質感になります。
いかにキレイになじませられるか
木炭を扱うポイントです。
そのために木炭紙は
木炭が上手く絡むように
紙の目が粗く凸凹しています。
そしてガーゼを使って紙の目に
木炭を入れてなじませたり
余分な木炭を取り除いたりしながら
トーンを伸ばして絵を作っていきます。

 

 

【鉛筆の扱い方】

鉛筆デッサンは
画用紙にシャープに研いだ鉛筆を
小刻みに動かして描いていきます。
鉛筆はいかにクリアに細部を描き込むか、
いかに上手く重ねるか
ポイントの画材です。
そのためデリケートな細部の描き込みや
発色の差別化ができるよう
幅広い硬度の品揃えがあります。
メーカーによって
一番柔らかいもので12B、
一番硬いもので10H
などと幅広く展開されています。

 

木炭と鉛筆の違い②進め方

木炭と鉛筆では
制作のアプローチや
学ぶ目的が違うので
専攻によってどちらに重きを置くかが
ある程度決まっています。

 

【木炭デッサンの進め方】

木炭デッサンは主に
油絵科や彫刻科専攻の学生が学びます。
まず大きく土台をつくり、
付けたり取ったりの面単位での
プラスマイナスの作業を繰り返して
形を描いていきます。
描くモチーフだけでなく
背景にもしっかりと木炭をつけて
進めていきます。
また、偶然できたテクスチャーや
トーンを活かしながら仕上げていくのも
木炭の特徴です。
このアプローチは
油絵や彫刻の制作プロセスと
近い感覚ですね。

 

 

【鉛筆デッサンの進め方】

鉛筆デッサンは主に
デザイン科、工芸科、日本画科専攻の学生
が学びます。
画用紙の白い余白を
キレイな奥行きのある空間に見せるために
構図やモチーフの構成にこだわります。
また形を正確に表して
細部の密度を出していくために
生き生きとした線描が大事です。
木炭がプラスマイナスのアプローチ
で進めていくのに対して、
鉛筆はプラスのアプローチ
見せていく画材ですね。

 

それぞれのポイントをまとめると
こうなります。

 

【木炭デッサンの進め方のポイント】

プラスとマイナス交互の作業

触覚的なアプローチ

絵画的な表現

形を面で捉える

全体のバランスをよく見る

 

 

【鉛筆デッサンの進め方のポイント】

プラスの作業の積み重ね

構図にこだわる

生き生きとした線描

見せ場はしっかり密度をだす

正確な形の表現

 

木炭と鉛筆の違い③仕上がりの雰囲気

木炭、鉛筆それぞれの素材にしか出せない
独特の魅力があります。
同じモチーフを描いても
描く素材で仕上がりの雰囲気が
全く違ってきます。
木炭も鉛筆もそれぞれどちらも
魅力的な雰囲気が出るので
ぜひ両方とも経験して欲しいところです。

 

【木炭デッサンの仕上がり】

木炭は大まかにトーンをつけながら
面で描き進めていくので
絵画のような味わいのある雰囲気
が特徴です。
全部をはっきり描かず
ふわっとニュアンスのある自然な画面に
仕上がるのが私は好きですね。
木炭デッサンの仕上がりの特徴を
まとめるとこんな感じです。

柔らかいシルキーな質感

霞がかった空気感

絵画的な豊かなテクスチャー

 

 

【鉛筆デッサンの仕上がり】

鉛筆は白い背景に緊張感のある構図で
クリアに細かく描いていくことで
描いたモチーフが引き立ち、
画面からモチーフが浮き出てくるような
雰囲気になります。
また細部の描写の密度が上がってくると
視界と描いた作品が一体化するような
目の錯覚を起こします。
鉛筆デッサンの仕上がりの特徴をまとめるとこんな感じです。

クリアでシャープな質感

乾いた感じ

細密な表現

形の正確で立体的な表現

モチーフの存在感が際立つ

 

【木炭と鉛筆】よくあるお悩み

木炭と鉛筆を扱うとよく出てくるお悩みも
それぞれ違いますのでまとめてみました。

それぞれの素材の特性によって
扱いのコツや注意点も違ってきますね。

 

【木炭のよくあるお悩み】

 

「すぐ黒く汚れる」

木炭はどうしても木炭の粉が舞うので
自分の手や部屋が汚れやすくなります。
部屋の換気や掃除をしたり、
粉を吸い込まないように
マスクをするのがオススメです。

 

「消しづらい」

木炭紙に一度木炭をつけると
完全に消すのは難しくなります。
いきなり輪郭線をグリグリ描くのは
オススメできません。
ある程度形の見当をつけてから
軽い力で大きく調子をつけていくことが
コツです。
消そうとして練りゴムで擦りすぎると
紙が傷んでしまい紙の目が潰れます。
目が潰れることで描きづらくなります。
消すことが多い方は
次の二つの方法で対策できます。

❶食パン(耳は取り除く)をちぎって
手で丸め消しゴムとして使います。
食パンに含まれる水分で
やさしく消すことができます。
食パンは乾燥しないように
ジップロックで保存し
なるべく新鮮なものを使います。

❷木炭をヤスリで削り、
木炭の粉を作ります。
粉をペーパーパレットの上に広げ、
描画用ローラー
(描画用ローラーは
発泡ポリエチレフォームで出来ていて
油絵やアクリル画の下地作りや
版画用ローラーとして使ったりします。)
にまぶします。
そのまま木炭紙の画面をローラーで撫でる
と木炭紙に軽くトーンをつけることが
できます。
手で直接トーンをつけるより
紙を傷めずにつけられます。

 

「細かい描写がしづらい」

鉛筆に比べると木炭は
シャープな線描や細密画には
向いていませんが、
輪郭線をキレイにに決めたい時や
見せ場を細かく描き込みたい時も
ありますよね。
木炭は紙につけたそのままだと
バサバサとした質感で細かく描きづらい
のでガーゼで擦って
紙の目にしっかり入れ込むことで
マットな質感にしていきます。
その上から細軸の硬い種類の木炭で
描いていきます。
ミズキの細軸の種類の木炭が
細かい部分も描きやすいので
オススメです。

 

 

【鉛筆のよくあるお悩み】

 

「広い面を塗るのに手間がかかる」

鉛筆は木炭のように一気に面を塗ることは
できないので
その分手数を増やしていく
必要があります。
鉛筆は芯の部分が1.5センチくらいは
出るように削って
芯の側面の部分で広くトーンを
つけていきましょう。

 

「筆跡が残りやすい」

フラットにトーンをつけたいとき
筆跡が残りやすい鉛筆は
塗りムラも起きやすくなります。
塗りムラが起きないようにするには
鉛筆の側面で軽く撫でるようにしたり、
H系の鉛筆を使ったり、
同じ方向に一定の力で
鉛筆を動かすようにしたりすると
解消できます。
ある程度鉛筆を乗せたら
ティッシュで擦ってムラをぼかしても
良いでしょう。

木炭と鉛筆どっちをやるべき?

これまで解説してきた通り
木炭と鉛筆にはそれぞれ
素材の特性と描き方の違いがあります。

両方やってみると良いと思いますし、
自分の目指す絵の方向性によって
どちらかに重きを置いても良いと思います。

絵画的な表現力をつけたい方や
デッサン力を高めたい方は
木炭デッサンがオススメです。
画面の全体感を見て
モチーフ同士の関係性を大きく捉えていく
木炭デッサンは専攻科関係なく
デッサン力アップになります。

私が個人的にやって良かったと思うのは
木炭デッサンです。
私はキワを強く描きすぎたり
細かい部分の描き込みに
気を取られてしまう癖があって
モチーフの量感(重量が感じられること)や
形の立体感の表現が苦手でした。
木炭デッサンによって
苦手部分の克服に繋がったと思っています。

鉛筆は繊細なトーンを作り込んだり
細かい部分の描写に集中しいる瞬間が
私は楽しく感じますね。

自分の課題克服や描いている時の楽しさも
選ぶ基準になってくると思います。

まとめ

木炭デッサンと鉛筆デッサンの違い
について解説してきました。
どちらかと言うと木炭の方が
一般的に馴染みの少ない画材なので
扱い方や描き方に戸惑うことと思います。

今まで使ったことのある鉛筆の扱い方の
延長で木炭も扱ってしまうので
難しく感じてしまいがちです。
この違いを理解し、
木炭と鉛筆それぞれの魅力を体感しながら
取り組んでいきましょう。

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