ポスト印象派の画家ポール・ゴーギャン|ゴッホにも影響を与え独自の絵画を探求した生涯

こんにちは、画家の落合真由美です。

今回は画家ポール・ゴーギャンのお話です。
同時代に生きた様々な画家たちと関わり
ながら唯一無二の作風を確立し、見るものに
訴えかけるような生命力にあふれた作品を
数多く描きました。
あのゴッホの耳切り事件にも関わり、
ゴッホの絵への向き合い方にも大きな影響を
与えました。

ゴーギャンはタヒチの人々を描いた作品が
有名ですが、ゴーギャンの生き方や
メッセージがそのまま込められていて
絵画への情熱や強い生命力を感じとること
ができます。
ゴーギャンの作品を見ると絵画とは見た風景
をそのまま写し取ることではなく自分の感情
を反映して届けることなのだと感じます。
ゴーギャンの生涯をたどりながらゴーギャン
が作品に込めた思いを探っていきます。

ポール・ゴーギャン年表

 

ポール・ゴーギャン1848-1903

 

1848年
フランス、パリのノートルダム・ド・
ロレット街に生まれます。

1851年頃
ナポレオン3世のクーデターによって
一家でペルーに亡命します。
父はペルーに向かう中、船上で急死して
しまいます。

7歳頃、フランスに帰国しその後、
商船の水先人見習いや兵役などを経て
株式ブローカーとして成功をおさめます。

25歳頃には
家庭を持ち5人の子供に恵まれます。

1873年頃
趣味で絵を描くようになります。
ゴーギャンが住んでいたパリには印象派
画家たちが集まるカフェもあり、
カミーユ・ピサロらと出会います。

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1881年
第6回印象派展に《裸婦習作》を出品します。

1883年頃
パリの株式市場が大暴落したことをきっかけ
に、30代半ばで画家を志すようになります。

1886年頃
フランス、ブルターニュ地方の
ポン=タヴァンでひと夏を過ごします。
象徴的なテーマを大胆な色遣いで描く
シャルル・ラヴァル、エミール・ベルナール
などの画家と交流します。
ゴーギャンは西洋美術の伝統が写実ばかり
重視していること、また交流のあった印象派
の画家たちも見たものだけを捉えようとして
いて象徴性が足りないことに疑問や
物足りなさを感じていました。
ゴーギャンは想像や感情も表現する独自の
絵画を模索し始めます。

1887年
シャルル・ラヴァルと共にカリブ海に
位置するマルティニーク島に滞在します。

1887年末
フランスに帰国したゴーギャンは
画家フィンセント・ファン・ゴッホと出会い
交流を始めます。

1888年
ゴッホと南フランス・アルルの「黄色い家」
で共同生活を始めます。絵画には想像を
取り入れるべきだと主張するゴーギャンと
自然を描くことにこだわるゴッホは次第に
価値観が合わなくなり、ゴーギャンは
アルルを去りました。
しばらくすると
ゴッホの耳きり事件が発生します。

1891年
文明から離れるためにゴーギャンは
ポリネシアのタヒチ島に向かいます。
フランスでは1830年頃から産業革命が
起こったことで経済的な価値観が国民を支配
していてゴーギャンは辟易していました。
ゴーギャンはタヒチで原始的な環境のなか
での美の追求をしようとしました。

 

1903年
さらに文明から離れたヒヴァオア島に
渡り、貧困と孤独の中で亡くなりました。

 

ポール・ゴーギャン作品の特徴

ここではゴーギャンがどんな美術様式から
影響を受けどのように独自の画風を確立して
いったのか解説していきます。

ゴーギャンはポスト印象派

ゴーギャンはポスト印象派の画家に
あたります。
ポスト印象派とは
印象派の後に起こった美術運動のことで
印象派の写実的な描写に加えて画家自身の
感情や思想も表現することに重きを
置きました。
ゴーギャンのほかにはファン・ゴッホ、
ポール・セザンヌ、ジョルジュ・スーラなど
が代表的です。
ポスト印象派の画風は画家それぞれ大きく
異なります。印象派の光や色彩の追及は継承
しながらも画家の内面の表現を追求し
それぞれの画家の個性が光っています。

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ゴーギャンは印象派に始まり様々な美術様式
からインスピレーションを受け独自の
スタイルを確立しました。

ゴーギャンが影響を受けたのは
象徴主義、アフリカの原始美術、
日本の浮世絵などです。

 

ゴーギャンが影響を受けた象徴主義

象徴主義は写実的な表現より観念や感情を
表現した美術運動です。当時ヨーロッパ
で起こった産業革命による物質主義に反発し
人間の苦悩、不安、精神、夢想など形のない
ものを神話などのモチーフを取り上げて表現
しました。象徴主義の代表的な画家は
ギュスターヴ・モロー、オディロン・ルドン、
グスタフ・クリムト、エドヴァルド・ムンク
などです。

 

ゴーギャンが影響を受けたアフリカ美術

アフリカの原始美術は彫刻や仮面、土器など
様々な形で表現されています。
対象を写実的に再現するのではなく象徴的な
形でデフォルメして表現されています。
画家のピカソやマティスらもアフリカの
原始美術に影響を受けました。

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ゴーギャンが影響を受けた日本の浮世絵

しっかり描く輪郭線、フラットな色面、
大胆に切り取った斬新な構図、鮮やかな色彩
が浮世絵の特徴です。
伝統的な西洋美術の遠近法とは全く異なる
浮世絵の描法はヨーロッパの画家たちに
とってとても新鮮なものでした。
パリ万博を通じてジャポニスムが流行し
モネやゴッホなども浮世絵の影響を大きく
受けました。

 

独自の画風を確立したゴーギャン

象徴主義、アフリカ美術、浮世絵から神話性、
象徴性、西洋美術を覆す斬新な描法に触発
されたゴーギャンは独自の画風を確立しました。

タヒチの文化や生き生きとした人々の様子を
自身の感情を込めながら作品にした
ゴーギャン。
ゴーギャンにとってタヒチという環境は
工業化や文明にさらされていない人間本来の
生き方を象徴したものでした。
当時のヨーロッパでは失われつつあった自然
と人間の精神のつながりを求めてタヒチに
赴き、タヒチでの生活や肌色が異なる民族の
慣習などが制作のモチベーションと
なりました。

ゴーギャンは色鮮やかで
プリミティブな雰囲気の作品を数多く
描いています。

ゴーギャンの絵を鑑賞するとタヒチでの生活
だけでなくゴーギャンがどんなフィルターで
その世界を見ていたのか、タヒチの自然と
どんな風に対話しながら瞑想していたのかが
感覚として伝わってくるようです。

代表作
《タヒチの女たち》
《黄色いキリスト》
《我々はどこから来たのか 我々は何者か
我々はどこへ行くのか》

 

ゴーギャンの作品の特徴をまとめると
このようになります。

心情を作品に込める
斬新な構図
大胆な色使い
装飾的な絵づくり
シンプルな形と色面構成
哲学的な探求

このようなキーワードを作品に込めて
見るものを心酔させ、深く考えさせるような
作品を生み出しました。

 

ゴーギャンのクロワゾニズム

ゴーギャンの描法は後に
「クロワゾニズム」と呼ばれる絵画様式
として確立されました。

クロワゾニズムとは
フランス語で「仕切り」という意味の
「クロワゾン」に由来し、フラットな色面と
しっかりした輪郭線、鮮やかな色で対象を
単純化し二次元的に表現するのが特徴です。
描くモチーフを単純化することで画家の感情
が反映できるようにしました。

ゴーギャンの内面表現の追及や
クロワゾニズムを用いた絵画様式は
「総合主義」とも呼ばれています。
ゴーギャンが確立した総合主義は20世紀の
美術にも大きな影響を与えました。
20世紀初頭に起こった感情や内面の表現を
重視したドイツ表現主義、荒々しい筆遣いで
感覚的に表現するフォービズムがその例です。

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ゴーギャンとゴッホの絆

 

1886年
ゴッホは美術商のパリ支店にいた弟テオを
訪ねてパリのモンマルトルに向かいます。

1887年
カリブ海のマルティニークにいたゴーギャン
はフランスに帰ってきて、ゴッホと出会い、
手紙をやり取りする中になります。

画家たちのコミュニティを作ろうとした
ゴッホは当時付き合いのあった画家仲間に
呼びかけて南フランスのアルルへと
向かいます。
ゴッホの呼びかけに唯一応えたゴーギャン
との共同生活が始まりました。

ゴーギャンが提唱したのは
形と色彩は同等でありどちらも大事にすべき
であるという思想です。
当時、色彩を分割して捉えていた印象派への
反発として、形と色彩を平坦な色面として
扱いました。
また、見たものを写実的にそのまま描くの
ではなく画家の内面も反映するべきだと主張
し、この考えはゴッホに大きな影響を
与えます。

しかしゴーギャンとゴッホの共同生活は
お互い個性が強すぎたために反発しあうこと
が多く9週間ほどで終わってしまいます。
ゴーギャンがアルルを去る日、ゴッホは気を
病んで自分の左耳を切り落とし、数年後には
自殺してしまいます。

ゴッホの自殺を知ったゴーギャンは数か月後
にタヒチに向かいます。タヒチで暮らす人々
を生き生きと描く中でゴーギャンは晩年、
タヒチには咲かないはずの花であるひまわり
を描きました。
仲違いした二人でしたが死の間際までずっと
ゴッホのことが頭にあり、目に見えない絆で
繋がっていたのだと思います。

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まとめ

ゴーギャンの波乱に満ちた生涯を解説
してきました。いろいろな画家たちや
美術様式と出合い、唯一無二の作風を確立
したゴーギャン。
画家としては30代半ばからのゆっくりな
スタートでしたが様々な経験を乗り越えて
きたからこそ持てる思想や感性があり
それだけ表現豊かだったのだと思います。