風景画を上手く描くコツ|初心者も取り組みやすい題材・構図・技法の具体例を紹介

こんにちは、画家の落合真由美です。

今回は「風景画」についてお話しします。
風景画といったら思い浮かべるのは
海や山などの自然風景でしょうか?

広大で煩雑な風景を画面にまとめるのは
けっこう難しいですよね。
全部描こうとすると細かすぎて
どこを描いたらいいのか分からなかったり
漠然と描くだけだと
メリハリのないつまらない絵に
なってしまったりしがちです。

また、よく描かれる題材だけあって
普通に描くだけだと
どこかで見たことのあるつまらない絵に
なってしまうことがあります。

そこで、
風景画を魅力的に描いていくための
ポイントを解説していきます。

 

風景画におすすめの題材

 

おすすめの題材をご紹介していきますが
ポイントとしては
見どころのある表情をしっかり入れていく
ことが大事になってきます。
そうすることでリズムが生まれ、
目を惹きつける作品になっていきます。

 

「海」
ビッグウェーブや波打ち際の表情など
波の動きを捉えると面白いです。
近景を描く場合は
目を惹く色合いの船や鳥、
椰子の木などを
構図のバランスをとるのに
上手く活用してもいいですね。

 

 

「空」
空や雲は様々な表情があり
描きやすい題材です。
朝日や夕陽を登場させても
画面が華やかになります。

 

 

「滝、川、池」
水面の映り込みや水流の表情を描いたり、
鯉などを登場させるのも
画面に動きを作りやすくなります。

 

 

「ゴルフ場」
ゴルフコースの風景は木々やグリーン、
バンカー、池など
描くポイントを作りやすく
面白い作品にしやすいです。

 

 

「街並み」
桜やイチョウなどの並木道、
お祭りやリゾート地などの雑踏風景、
歴史ある建造物やレトロな雰囲気の街並み、
花壇のある風景や港町、
カラフルな映える建物など
主役になりそうな題材が沢山あります。

 

風景画の奥行きの出し方

風景の広大さを表現するには
奥行きをしっかり出すことが
大切になってきます。

ポイントを3つご紹介します。

 

①遠近法を使う 

空気遠近法や透視図法を使うことで
スケールの大きな風景も
画面にカッコよく入れやすくなります。
空気遠近法や透視図法などについては
こちらで詳しく解説しています。

奥行きのある絵を描くには?絶大な効果がある2つのテクニック

 

②描き込みをして見所を作る

近景(近くに見える景色)
の鮮明に見える表情を
しっかり描き込んでいき
視線がまず近景で止まるようにしましょう。
遠景は手数を減らしたり暈したりすること
で視線が流れるようにし
遠くまで広がる感じを演出しましょう。

 

 

③人が入ると自然の広大さが表現しやすい

風景を広大に見せるテクニックとして
人物を登場させると
大きさの対比で風景がより大きく
奥行きがあるように見えます。
人物のシルエットだけ
小さく簡単に描くだけでも効果があります。

 

風景画で王道の構図

景色の広がりや遠近感を表現する
王道の構図としては
空間や背景を多く取る構図が一般的です。

 

 

地平線や水平線を画面のフレームに対して
平行に入れると
景色が平坦に続く穏やかな印象になります。

 

 

地平線や水平線を画面のフレームに対して
斜めに入れると
その空間に入り込んでいるかのような
臨場感や立体感を感じる画面になります。

 

風景画を面白く見せる構図

興味のある部位に
フォーカスした構図を取ると
主役やテーマ性が引き立つ作品になります。
例えば近景に思い切り寄った構図で、
海だったら波打ち際の表情を
細かく描いたり、
森林だったら木の葉や木の幹の質感を
細かく描いたりして
奥にある遠景との対比で
個性的な作品にすることができます。

 

 

高さのある山や建物を見上げたり
あるいは高い目線から俯瞰したりしたとき
の自分の目線をそのまま構図にすると
実際にその場にいるような臨場感
表現することができます。

 

 

昆虫や動物、鯉などを登場させると
風景との異質感で
面白さを出すことができます。

 

風景画を上手く描くコツ

煩雑で広大な風景をきれいに画面に収めて
描き進めるのは
一見時間がかかりそうですが、
順序よく進めることで
バランスの取れた作品に仕上がります。

 

描き方の順序としては

 

①主役(テーマ)を決める

何をどんな風に描きたいのかを決めます。
例えば海を描くにしても
海の全体の構成を描きたいのか、
海を取り巻く周りの状況を描きたいのか、
海の波しぶきなどの細かい部分を
リアルに描きたいのか
など何を主役にするかの方向性ですね。

 

 

②近景 中景 遠景ごとに面で塗り分ける

近い景色、中くらいの位置にある景色、
遠くの景色を大きく区分けして考えて
塗り分けていきます。
最初は細かく区切りすぎずに
おおまかに塗り分けていく感じで
進めていくと
近景と遠景の差別化ができ
画面にメリハリと奥行きが
生まれていきます。

 

 

③大きな塊で捉えて描いていく

煩雑な風景は細かいところを
一つ一つ見がちですが
細かい部分は省いて
大きな塊で捉えていくのがポイントです。
描き進めるにつれて
徐々に見方を細かく分割していくと
良いでしょう。
最初から一つ一つ細かく描いてしまうと
それぞれの位置関係や状況設定が
ぶれてしまうからです。

 

 

④主役部分を細かく描き込んでいく

仕上げに一番見せたい主役の部分を
クリアに描き込んでいくことで
作品が完成していきます。
そうすることで細かく描き込んだ部分と
ラフに塗っただけの部分との
「粗密」の関係ができ上がり
バランスの良い作品になります。
細かく描かない画風の作品でも
主役部分が引き立つようなタッチや色使い
になっているかがポイントですね。

 

風景の立体感やリアルさを出す技法

風景の奥行きや立体感、
リアルさなどを表現するために、
空気遠近法や透視図法を用いることは
よく言われますが
風景ならではの表情を描くためには他には
どんな技法があるのでしょうか?

 

解説していきます。

 

【油絵の場合】

油絵の透明感や
絵の具を伸ばして描ける特性は
海山川などの自然風景を描くのに
適しています。
特に遠景や中景を描く際に
色面で捉えたり
グラデーションで描いていくプロセスは
油絵の具がびったりですね。

具体的に油絵で使える技法をご紹介します。

 

ドライブラシ
溶き油なしの固めの絵の具を
少量だけ筆につけ
画面にかすれさせるように描く技法です。
乾いた地面や岩肌、草花や芝生などの
質感を描くのにぴったりです。

 

 

インパスト
不透明な絵の具を
筆やペインティングナイフで
厚塗りすることで
その凹凸が物質の素材感や陰影を
強調したり
迫力をもたらします。
海の風景で波の躍動感や岸壁の凹凸、
木の幹の厚くて硬い質感、
建物の重厚な外壁の質感などを
表現できます。

 

グラデーション
パレット上や画面上で中間色の変化を作り
筆で馴染ませていきます。
空、地面、草木、海や川や滝の水流などを
描くときに
筆跡を残さない写実的な表現ができます。

 

 

スフマート
自由に絵の具を伸ばしたりぼかしたりして
煙のような繊細で柔らかい色調を作ります。
空に浮かぶ雲の濃淡、
滝壷へ落下する水の様子など
茫漠とした質感を表現することができます。

 

 

【デッサンの場合】

木炭や鉛筆などのデッサンは
近景や中景の景色を描くのに向いています。
街並みや建物、
思い切り寄った構図の草花など
細かい部分を一気に集中して
描き込みできます。

 

デッサンの技法についてはこちらで
解説しています。

 

鉛筆でリアルな絵を描く | 鉛筆の使い方とテクニックだけに陥らない描き方

木炭デッサンに必要な道具や進め方 | 初心者でも扱いやすくなるコツ

風景画におしゃれさを出すには?

風景画と聞くと
緑や茶色の色を使った絵画など
落ち着いた渋い感じのイメージを
する方が多いかもしれません。

自然風景の見たままの色でそのまま描くと
野暮ったく見えてしまうことがあります。
現代のインテリアに合うようなおしゃれ感
を出すには
厳密に見たままに描くのではなく
アレンジしても良いかと思います。

たとえば見たままの色を生かしつつも
色に統一感を出して
洗練された感じにしたり、
全く違う色にして
仮想世界のようなポップさを出したり
などです。

 

色についてはこちらで解説しています。

色彩センスや知識がなくてもOK | 初心者もできる調和のとれた色の組み合わせ

 

アレンジの仕方としてはこんな感じです。

 

①色をアレンジする

色の鮮やかさを強調して描いたり、
色を統一して世界観を出したり
思い切り現実の色とはかけ離れた色を
チョイスするとおしゃれな感じになります。

 

 

②抽象っぽく描く

細かい部分は省いて
特徴的な部分だけシンプル化して描いたり、
色の雰囲気だけチョイスして
形は大きく崩すなど
思い切りアレンジするのも楽しいです。

 

 

③光と影をドラマチックに描く

実際に見える光と影をより強調して描く
方法です。
主役がより印象的に見えたり、
よくある風景も特別で
感動的な雰囲気になります。

 

まとめ

広大で素敵な風景に触れると
癒され感動しますよね。
自分が見て触れて体験したときの
フレッシュな印象や感動を
作品のテーマにして、
それがしっかり伝わる絵になってるか
をチェックしましょう。

そしてテーマに沿って描き進めること、
奥行きや位置関係を注意することが
大事ですね。

また風景はその日の天気や時間帯によって
光と影の当たり方が変わることで
色の見え方も違ってくるので
注意しましょう。
対象を写真に撮っておくのが良いですね。
風景画制作を楽しんでください。

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