こんにちは、画家の落合真由美です。
”空間や対象を画面上の
線や調子に置き換えて錯覚を作り出すこと”
それを「デッサン」と呼びますが
デッサンと言っても
描き方や表現の仕方に個性があるものです。
デッサンに取り組むにあたって
ある程度ルールや理屈は
守らなければいけませんが
その中でも自分らしい方向性を見出すこと
によってデッサンの上達は早まるものですし
格段にデッサンは楽しくなります。
何枚かデッサンをこなして少し慣れてきたら
これからご紹介する
自分に合ったアプローチ方法を
模索してみるのがオススメです。
自分らしい描き方で
最短で上達していくための
ヒントとなるでしょう。
デッサンのアプローチ法は2種類
デッサンの工程を大まかにまとめると
こうなります。
形を捉える
光と影の明暗を描き分ける
空間の奥行を描く
質感や量感を表現する
色幅を表現する
このデッサンの工程は
触覚的な見方
と
映像的な見方
の2つによって成り立っています。
触覚的な見方とは
形態の構造を追求するための見方です。
映像的な見方とは
固有色や陰影の明暗を追求するための見方
です。
本来はこの2つの視点を切り離すと
偏った見方になってしまいますが
どちらに力を入れて追求するかによって
全く違う印象のデッサンになります。
そして描きやすさも変わることで
上達のスピードもぐんと上がりますし、
デッサンが見違えるほど
楽しくなっていきます。
自分が目指すデッサンの方向性を
具体的に深堀してみたり、
お手本にしたい作品が
どちらのアプローチで描かれたものなのか
によって
触覚的なアプローチで仕上げていくのか、
映像的なアプローチで仕上げていくのか
見当をつけてみましょう。
触覚的なデッサンとは
触覚的なアプローチは
彫刻科や工芸科の専攻者が
よくやるアプローチです。
形態の構造を捉えて立体的に描いていきます。
モチーフの表面に触れた足跡を残す意識で
立体の凹凸を描きます。
線の強弱によって立体を表したり、
丸みに沿った線を残したりする描き方です。
また目に見えない稜線
(形の変化する面と面の境目)や
凹凸を調子に置き換えていきます。
漫然とモチーフを見ていても
稜線や凹凸は見えてこないので
360度様々な角度から観察して
形の構造に気づいたり
実際にモチーフを触ってみて
わずかな凹凸にも意識を集中させる見方
が必要です。
球体など滑らかな面の変化があるものは
意識的に稜線を見つけないと見えてきません。
まさに彫刻や工芸品を実際に作るような感覚
です。
注意点は形の足跡を残していく中でも
明暗の秩序は保つことです。
明るい暗いの意識がないと
手数がむやみに増えるだけで
真っ黒なデッサンになってしまいます。
映像的なデッサンとは
映像的なアプローチは
油絵科などの絵画系の専攻者が
よくやるアプローチです。
固有色や陰影を捉えて
明暗の調子を追求していきます。
空気遠近法を用いたり、
ムラなく斜線を重ねて
明暗の調子を追求します。
調子をぼかして
滑らかな明暗の調子を作ったりと
見た目の調子の美しさで
絵を構成していきます。
光と影に着目した繊細なアプローチも
魅力的な作品につながります。
注意点は
形態感が曖昧にならないようにすることです。
形態の土台があってこそ
質感の表現が成り立つからです。
色の見え方は相対的なものなので
固有色の調子は
隣り合う面の色との対比で表現していきます。
また黒さは
その黒さを引き立たせる周りの明るさ
があってこそ表現できるものです。
映像的なアプローチでの醍醐味は
質感を魅力的に表現していくことです。
質感表現はハイライトによって強調したり
質感が鮮明に見えやすい稜線の部分を
集中して観察すると描きやすいです。
映像的にきれいなデッサンをするには
画材をきれいに使いこなすこともコツです。
ムラなく調子をつけていくことはもちろん、
画材の硬軟を使い分けて質感を表現し
なるべく筆跡を残さない描き方
をしていきます。
自分に合ったデッサンの方向性とは?
デッサンの工程の中でも
自分の得意不得意が必ずあることと思います。
形をとるのは苦手だけど
きれいな調子を作るのが得意な人。
繊細な調子の作り込みは苦手だけど
力強く形を立体的に捉えていくことが
得意な人。様々ですね。
デッサンの基本ルールを勉強していく中でも
課題点だけに目を向けるのではなく
得意な表現を見出して伸ばしていくことは
とても大切です。
デッサンが楽しくない、辛いと感じたり、
方向性が分からないときは
上手い参考作品をたくさん見ることを
オススメします。
自分の理想の作品像に
必ず出合えると思います。
方向性を決めることは
自分の上達の足掛かりになりますので
ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回はデッサンの2つのアプローチ方法
についてお話してきました。
私は自分の理想の作品像や
自分の描き方の癖から
映像的な見方を追求して
得意を極めていく意識に切り替えたことで
デッサンにのめり込むことができましたし
上達のスピードも上げることができました。
見方が偏りすぎないように
基礎的な部分はいつも怠らないようにしつつ
自分らしく取り組んでいきましょう。