【絵画の模写のやり方】美術初心者が模写で力をつけるためのコツ

こんにちは、画家の落合真由美です。

今回は「絵画の模写」をテーマに
お話ししていきます。

模写をする時ってどんな時でしょう?

名画などの優れた作品から
「効率よく描く上手くなるポイントを
学びたい、画家の目線を体験したい、
カッコいい構図や色使いを盗みたい」
など上手な描き方を習得したい時に
する方が多いのではないでしょうか。

私も学生の頃によく模写をしました。
上達の近道ですし、
三次元の世界を二次元に置き換えていく
無駄のないプロセスを体感できるのは
感動的です。

せっかくの体験を確実に自分の技術に
していくために、
今回はその模写の効果的なやり方を
解説していきます。

模写をする題材の決め方

自分が好きな作品上手いと思う作品
自分が目指す理想的な表現をしている作品
を題材にしましょう。

描写力も表現力も上手い部分を盗むことで
自分のものにしていくことができます。

人の作品を踏襲する中でこそ
自分らしい視点や描き方の特徴が出てきて
独自性のある表現に繋がっていくものです。

何を模写したら良いか迷った時のために
題材の決め方のポイントを
まとめてみました。

 

参考になる表現をしている絵画から選ぶ

構図、構成方法
色使い
明暗の描き分け方
立体感のある描き方
細部の描写方法
など

 

 

自分が苦手な題材や
表現が上手い絵画から選ぶ

人物(全身像、頭髪、顔、手など)
工業製品
布製品
風景
動植物
形の立体的な表現
明暗の表現
リアルな質感
など

 

 

自分と画風が近い絵画から選ぶ

 

自分が好きな絵画から選ぶ

 

見ていて上手いと思う絵画から選ぶ

 

光が斜め上から当たっていて
陰影が描きやすい絵画を選ぶ

 

模写にオススメの画家

フェルメール

光と影を上手く描き作品をドラマチックに
見せたりと鑑賞者を引き込ませる表現力が
多彩です。
構図の取り方、主役の見せ方、
光と影の扱い方が参考になります。

 

 

アントニオ・ロペス

煩雑な風景や複雑な形態のモチーフを
的確に単純化し面で捉えています。
手数の一つ一つはそれほど細かくないのに
煩雑な状況を効率的にリアルに
描いています。

 

アンドリュー・ワイエス

構図、明暗の描き分け、立体的な形の表現、
繊細な描き込みなど
描写の基本を分かりやすく学べます。

 

サム・フランシス

画面の余白を活かしたミニマルな構成が
特徴です。
抽象画ですが構図の取り方や
構成のバランス感覚は
具象画を描く上でも
押さえておきたい力です。
何枚も枚数をこなして
心地良い構図の感覚を体感するのが
オススメです。

 

リチャード・ハミルトン

コラージュした様に空間やモチーフを
色面で分割したり、
ある部分はリアルに描いたりと
表現力が多彩です。
力の疎密、構成バランス、空間の捉え方、
色彩感覚などが参考になります。

 

初心者にオススメ | 模写に便利な道具

一から全部見ながら描き写す以外にも
題材にする写真などの下絵を用意して
輪郭線を転写する方法があります。

 

カーボン紙を使う

模写の題材と画用紙の間にカーボン紙を
挟んで転写する方法です。

 

グリッドを引いて模写する

模写の題材と画用紙に同じ比率のグリッド
を引くことで形を観察しやすくし、
転写していきます。
透明な下敷きにマジックでグリッドを
引いて模写の題材の上に載せて使ったり、
画用紙にマジックでグリッドを引いたもの
を描く画用紙の下に敷いて使ったりしても
便利です。

 

トレーシングペーパーを使う

半透明なので、模写の題材の上に載せて
直接描くことができます。
輪郭線や構図の模写、
大まかに鉛筆で模写したい時に便利です。

 

模写をするときのコツ

①大きく描きすぎない

模写は数をこなしていくことが大事です。
数をこなすことで構図、光と影の捉え方、
色使い、形の捉え方、立体感の出し方など
上手い画家に共通する傾向を掴むことが
できます。
数をある程度こなすには、
すぐに描き切れるくらいの大きさが
望ましいでしょう。
B5サイズ以下が無理なく沢山描けて
オススメです。

 

②単純化して模写する

構図、光と影の捉え方、色使い、
形の捉え方、立体感の出し方など
上手いポイントを盗むには
細かい部分は省いて重要なところだけで
十分です。
なので単純化して模写する必要があります。
特に心地良い構図の習得は
単純化して全体感を見る体験を積むことで
身についていきます。

 

③主役と脇役を描き分ける

通常絵を描く時と同様に
模写をする時でも描き方には
メリハリが必要です。
まず作品の主役(見せ場)と
脇役(力を抜く所)を理解することです。
主役と脇役では描き方が違いますし、
手数も違います。
主役らしく見せるために
どんな風に描いているのか
脇役として見せるために
どんな風に手を抜いているのか
力の抜き差しを学べるのも
模写の醍醐味です。
そのモノらしく描くために
手数は重要ではありません。
さっと一筆で簡単に描いた手法で
リアルに見せている作品が多数あります。
力の抜き方も
模写で体験してほしいポイントです。

 

④制作過程を模写する

絵画やデッサンのハウツー本には
順を追って絵の制作過程を
公開しているものがあります。

どうやって描かれているのか、
その過程をマネすることが
上手い描き方をマスターする近道です。
制作過程が具体的に示されていない作品
でもどんなプロセスで描いているのか
想像しながら描くだけでも効果があります。

絵は大まかに言うと

ベースを作る

形を描き起こす

細かい部分を描き込む

というプロセスで成り立っています。

模写をする時でも
そのプロセスに則って行うことが
自力で上手い絵を描くポイントとなります。

端からジワジワと
お手本を描き写す人がいますが、
そのやり方では描く力はつきません。

絵は周りの部分との関係性を測りながら
それぞれの形の大きさや
明暗の強弱のバランスを
描き進めていくことです。
模写でも通常の描画と
同じプロセスで描くことで
画面を見る力がつき、
上手い絵に繋がっていきます。

 

模写にオススメの画材

どんな画材で模写するかによっても
得られる効果は違ってきます。
模写する目的によって使う画材を
選ぶのもオススメです。

例えば

鉛筆なら…

線描や細密描写の習得に向いています。
また、構図の取り方や構成バランスだけを
単純化して模写したい時も鉛筆が便利です。

 

木炭なら…

対象を面で捉えて、
全体感を捉える力がつきます。
上手いポイントを効率よく盗むには
陰影やディティールを単純化して
模写していくことが必要なため
効率的なデッサン力習得には
木炭が向いています。

 

油絵の具やアクリル絵の具、水彩絵具、
色鉛筆など色を使って描く画材なら…

色の構成バランスなど
色使いの習得に向いています。
絵の具のチューブから出したままではない
混色しないと作れないような複雑な色や
画面上で混ざり合った色の濃淡などの
習得に向いています。

 

さらに力をつけるための模写の心構え

①目的を持って取り組む

模写はしっかり目的を持って
取り組むことで、かなり効果が出ます。

誰しも普段上手く描けないところ、
人から客観的に言われている課題点、
マスターしたい表現など
お悩みがあると思います。
こんな風に描きたい!
などの理想もあると思います。

そのゴールイメージをしっかり持った上で
お手本を見てマネしてみることが大切です。

 

②観察の仕方をマネする

お手本にする作品をよく観察すると
筆跡が見てとれ、
その作者ならではの観察の仕方、
描き方があることが分かると思います。

モノの形を触るようなストロークで
描いた作品、
光と影を強調して描いた作品
など様々ですね。
作者が対象をどんな風に観察して解釈した
のかを感じながら描いてみましょう。

プロの画家の作品は観察しづらい部分、
煩雑で描きにくい部分を
上手く単純化して描いていたり、
大きな特徴のある部分だけを
抜粋して描いていたりします。

つまりどこを描けばそのモノらしさが出る
のかを熟知しています。
普段自分が描いていて
難しいと感じる部分を
プロの画家はどう解釈して描いているか?
という視点で模写してみると、
新しい発見があるでしょう。

 

まとめ

模写で力をつけるためのコツについて
解説してきました。

上手い作品をたくさん見るだけでも
上達のヒントが得られますし、
全部完璧に細かく模写するのではなく
大雑把に模写するだけでも
充分効果があります。

ぜひ沢山模写して自分の作品に
活かしてみてください。

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